学習院高等科卒業のころより文芸雑誌『白樺』の創刊に参加するなど、早くから宗教哲学や西洋近代美術に深い関心を持っていた柳宗悦(1889~1961)。
東京帝国大学哲学科を卒業後、朝鮮陶磁器の美しさに魅了されるいっぽうで、柳は無名の職人がつくる日常品の美にも開眼。日本各地の手仕事を調査・蒐集するなかで、1925年には民衆的工芸品の美を称揚するため「民藝」の新語を生み出し、民藝運動を本格的にスタートさせた。
1936年に日本民藝館を開館し、初代館長に就任した柳は、61年にその生涯を閉じるまで、同館を拠点に数々の展覧会や各地への工芸調査や蒐集の旅、執筆活動など、精力的に活動。晩年の57年には、仏教の他力本願の思想に基づいた独創的な仏教美学を提唱し、文化功労者にも選ばれた。
今回、日本民藝館で開催される展覧会「柳宗悦の『直観』|美を見いだす力」は、朝鮮陶磁や木喰仏、日本の民藝などに次々と美を見出した柳の「直観」に着目したもの。
本展では、柳が時代、産地、分野を問わず蒐集した民藝品の数々をキャプションの無い空間で紹介することで、柳の直観と眼差しをたどることを試みる。