EXHIBITIONS

闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s

2018.11.23 - 2019.01.20

レオニーニョ・オルテガ・ドロリコン[フィリピン] 農園のなかで(部分) 2014 福岡アジア美術館蔵

ホン・ソンダム 五月-25 大同世-1 1984 福岡アジア美術館蔵

 簡便な材料と技術で複製できることから、独立運動や民主化運動、労働運動、環境運動など、アジア各地の政治・社会運動の中でしばしば制作された「木版画」。感情を主体的に表現し、社会の問題をえぐりだし、遠隔地の人々との連帯を求める「メディア」として、アジアの近代化に重要な役割を果たした。

 1930年代の中国各地では、魯迅が推進した木版画が巨大な運動体となって展開。日本では戦後の民主化運動やサークル誌で木版画がさかんにつくられ、多数の中国版画展が開催された。

 また民主化運動が活発化した80年代の韓国では、木版画が多様な手段で用いられ、大いに活躍。今日のインターネット時代でも、インドネシアやマレーシアではパンク音楽家や美術家グループが、自由と自立を求めるメッセージを木版画で発信し続けている。

 本展では、これらの時代・地域の作品のほか、ベンガルの独立運動、シンガポールの日常、ベトナム戦争、フィリピンの闘争などをテーマとした木版画作品と、版画を掲載した印刷物などの資料をあわせた約400点を紹介。木版画を大衆的な「メディア」としてとらえ、異なる時代と地域をつなぐ版画運動のネットワークに注目する。