EXHIBITIONS

メーデイアの鍋

アートかビーフンか白厨
2026.03.27 - 05.09
 アートかビーフンか白厨で、磯村暖、佐藤瞭太郎、島田清夏、たかくらかずきによる展覧会「メーデイアの鍋」が開催されている。

 以下、本展のステートメントとなる。

 「私たちの社会は、無限や永遠という概念を当然のものとして受け入れてきた。エネルギー開発、宗教、哲学、そして進歩という思想。それらは未来を開くものとして歓迎されてきた。しかし多くの場合、その有用性は時間とともに腐敗し、毒へと変わる。核実験、プラスチック、環境破壊、制度の腐敗。進歩はいつから毒になるのか。そしてそうなりうる未来は想像可能な物差しで測り直すことができるのか。

 ギリシア神話に登場する王女であり魔女でもあるメーデイアは、鍋を用いて老人を若返らせた。血を抜き、薬草とともに煮ることで時間を巻き戻したのである。しかし同じ鍋は王を殺すためにも使われた。変化を生み出す装置は、同時に不可逆の装置でもある。鍋とは火を制御する装置であり、エネルギーを人間の手に収めるための技術である。変化、再生、そして破壊。その両義性は現代社会におけるエネルギー技術の姿と重なって見える。

 現代美術もまた、物質を消費して別の形へと変換しようとする装置だともいえる。伝統という汲み尽くせぬ泉から素材を取り出し、それを別の意味へと変形させる。その行為はメーデイアの鍋のように、再生の希望と不可逆の暴力を同時に含んでいる。本展ではメーデイアを、エネルギーの象徴であり、他者に対する理性の外側にある感情の象徴として捉える。進歩と毒、そのふたつの力のあいだに立つ私たちの現在地を、美術という装置を通して確かめようとする」(展覧会ウェブサイトより)。

 出展作家の磯村暖は、現在東京を拠点に活動している。絵画、彫刻、映像、サウンドインスタレーション、プロジェクトベースの作品など幅広い表現方法を用いる。人類への眼差しを基軸にしながら、サイエンスフィクション的なイマジネーション、社会規範の引用、ユーモア、自身の人生の反映が混線した作品群を制作してきた。ACCフェローシップでのニューヨークにおける滞在制作、アジアアートビエンナーレ(国立台湾美術館)への出展、TEDxUTokyo 2023(東京大学安田講堂)のイベントに登壇するなど、その活動の場は様々な領域に及んでいる。

 佐藤瞭太郎は1999年北海道生まれ。神奈川県在住。資産として流通するデータを収集し、写真、映像、ゲームなどのイメージを参照しつつ編集することで今日のインターネットを描写する作品を制作してきた。近年は、現代のイメージメイキングにおけるデータ、ソフトウェア、プラットフォームなどに着目し、想像力の生産関係をテーマに作品を制作する。

 島田清夏は日本大学藝術学部映画学科卒業。東京藝術大学大学院博士後期課程修了、博士(美術)。 火、光、爆発、放射線、水といった現象を題材に、映像、インスタレーションを中心に制作してきた。花火を重要な媒体のひとつとして扱い、火薬学、身体性、文化史、周辺環境との相互作用などを横断的にリサーチし、現象の立ち上がりそのものを作品として再構成する。国内外の花火大会に花火ショーデザイナーとしても参加している。

 たかくらかずきは1987年生まれ。東京造形大学大学院修士課程修了。ビデオゲーム、ピクセルアート、XR、AIなどのデジタル表現を用い、キャラクターやゲームの構造を手掛かりに、デジタル時代における身体性や儀式性の在り方を探求してきた。東洋思想の視点を参照しながら、現代美術の構造や前提を再考する作品を制作している。OpenAI「sora select TOKYO」選出作家。また、演劇カンパニー「範宙遊泳」のアートディレクターとして、映像やビジュアル・ディレクションも手がける。