Instructions and Suggestions

　TARO NASUで「Instructions and Suggestions」が開催されている。出展作家は、カール・アンドレ、マルセル・ブロータース、マリア・アイヒホルン、ライアン・ガンダー、リアム・ギリック、ピエール・ユイグ、河原温、ローレンス・ウィナー。

　現代美術においては、物質的な存在としての作品がなくとも、その作品についての言説だけで作品としての存在を認められることがある。コンセプチュアルアートと分類されるこの種の美術作品は、作家が記した「何をもって作品の構成要素とするか、そして完成した作品をいかに展示するか」についての指示書が作品の核となり、コレクターは作家によるそれらの指示を遂行するための「権利」を作品として購入する。その背景には、作品の意図や内包される思考が、作品に関わる技術的・物質的要素と等価である、あるいはそれよりも重要であるとみなすコンセプチュアリズムの思想が存在している。この思想は、マルセル・デュシャンの《泉》以来、多彩な展開を遂げながら見る人の思考を揺さぶる作品を生み出してきた。

　本展では、出展作家の作品指示書を作品とあわせて展示。ローレンス・ウィナー《The Declaration of Intent》や、河原温の「Today（日付絵画）」シリーズを幼稚園の教室に展示する「Pure Consciousness」プロジェクト、蜘蛛と人間との共同作業を指示するピエール・ユイグ、コンセプトのなかにイギリス人らしいユーモアをひそませるリアム・ギリックなど、いずれもアートの領域を拡大し、知覚の解放を促す実験的な作品が並ぶ。