金森桜子「CHANCE」

　光灯で、金森桜子による個展「CHANCE」が開催されている。

　金森にとって初個展であり、デビュー展とも言える本展では、一貫して制作主題としてきた「CHANCE＝偶然性」をテーマに、版画を用いたインスタレーションが展開される。

　金森桜子は2000年東京都生まれ。高校時代に美術を志すなかでレンブラント・ファン・レインやオディロン・ルドンの版画に興味を持ち、大学で専攻した版画で様々な技法や表現を学びながらも「最初は版画の工程を体で覚えることが得意ではなく、身体性とマッチしなかった」と言う。しかし続けていくなかで、版画が制作過程において「手仕事を重ねたあと、機械を通すことで一度自分の身体から離れ、フラットな作品になる」という特性に惹かれていった。それは金森が見出した版画との新たな向きあい方であった。

　金森の作品制作では、版画の精緻な複製性よりも、工程内で発生するエラーや滲みなどの偶然性が重視される。ガラス、布、段ボール、わら半紙などの素材を支持体に用いるのも、インクと素材の相性によって引き起こされる予測不可能な偶然性を表面化させる試みの一貫であり、版画の制作段階での「手を離れる」ことで得られる不確実性を強調する。

　芸術の歴史のなかで、作者が意図的にコントロールを手放し、偶然性を呼び込むことで価値を生み出す行為は繰り返されてきた。複製技術が加速度的に進化し続ける現代において、金森は版画を通して現代的な文脈でその偶然性の再解釈を試みる。

　本展では、おもにシルクスクリーンやリトグラフを用いた新作を発表。