EXHIBITIONS

特集展示

『月映』とその時代―1910年代日本の創作版画

田中恭吉 冬蟲夏草(公刊『月映』Ⅲ) 1914年12月発行 木版 15.7 × 13.0 ㎝

 町田市立国際版画美術館で「『月映』とその時代―1910年代日本の創作版画」が開催されている。

 1914年、東京美術学校(現・東京藝術大学)の学生であった恩地孝四郎(おんち・こうしろう、1891〜1955)、田中恭吉(たなか・きょうきち、1892〜1915)、藤森静雄(ふじもり・しずお、1891〜1943)の3人が、『夢二画集』『白樺』の出版社でもあった洛陽堂から版画誌『月映』(つくはえ)を公刊し、1915年にかけて全7号を発行した。事前に、3人がそれぞれ一冊ずつ所有する同名冊子の私輯版を6号制作した後のことであった。

『月映』は版画家を志す青年が内なる感情を表出した、大正期特有の生命表現が見られる版画誌だ。しばらく幻の冊子とされていたが、1970年代に文芸雑誌や美術雑誌が特集し、東京国立近代美術館が「恩地孝四郎と『月映』」展を開催したことなどによって、その存在や作品が注目されるようになる。

 本展は、町田市立国際版画美術館が所蔵する公刊第3号、5号、6号、7号のなかから一部の作品を選んで展示し、発刊から110年を迎えた『月映』の表現を紹介。また、『月映』の版画と共鳴する同時代の創作版画も展示し、生命観を表わすことを志向した1910年代の表現世界を見る。