EXHIBITIONS

土門拳のマチエール!

2024.10.26 - 2025.01.19

土門拳 どしゃぶり 東京築地 1955 土門拳記念館所蔵

 土門拳記念館で「土門拳のマチエール!」が開催されている。

 写真家・土門拳(1909〜1990)は幼い頃から多くの書物を読み漁り、古今東西の美術に強い関心を抱いていた。青年期に憧れていた画家の道は19歳の頃に諦めたものの、後年に写真家として大成してからも、美術的・絵画的な視点から写真について語っている。

 そうしたなかで土門が頻繁に使った言葉のひとつが「マチエール」だ。本来は西洋絵画における絵具の質感を指すために使われることが多いこの単語を写真に関する言説のなかでよく用いており、土門にとってマチエールという概念がきわめて重要だったことが窺える。

 また、仏像の"へそ"について「指をつっこんでくすぐってみたい」と語ったり、風景写真に関する持論を述べる際に「手でつかめる風景」という独自の概念を用いたりするなど、被写体や写真を巡る土門の思考のなかには触覚的な感覚が表れている。土門が得意としたクローズアップ撮影、物質が持つ質感を局所的に強調する手法なども、そうした志向ととらえることができる。

 本展では、「マチエール」「質感」「触覚」などをキーワードに、多様なジャンルの土門作品を横断しながらその特性を再考する。