EXHIBITIONS

富山秀伯作陶展―隔離の壁を越える作品たち―

国立ハンセン病資料館
2024.10.16 - 11.04
 国立ハンセン病資料館で「富山秀伯作陶展―隔離の壁を越える作品たち―」が開催されている。

 富山秀伯(富岡克行)は1948(昭和23)年群馬県生まれ。ハンセン病を発病し、1961(昭和36)年に多磨全生園に入園した。現在も多磨全生園で暮らしている。

 富山は療養所のなかで様々な趣味に没頭するが、とりわけ大きな生きがいとなったのが陶芸であった。1980(昭和55)年から多磨全生園陶芸室に籍を置き、陶芸にのめりこんでいく。やがては陶芸を生業として社会復帰することを目指し、公募展へ出品するようになった。しかし、実力者が集まる大きな公募展では落選し続けた。それでも諦めず、実家の梨園の梨の木の灰を釉薬に用いた大壺「紫陽花」を制作。作品は目標としていた権威ある公募展で入選を果たす。

 これに手ごたえを感じた富山は、本格的に陶芸家の道を目指すが、資金面や自身の障がいの都合で社会復帰は断念。しかしその後も作陶活動を続け、東村山市中央公民館の陶芸講師を担当し、1991(平成3)年には教え子の勧めもあり個展を開催することができた。

 趣味として始まった陶芸は、社会でも通用するプロフェッショナルの域にまで達し、市民との交流も生み出した。こうして富山は、作陶活動を通じて「隔離のもとでの社会復帰」を実現した。

 隔離の壁を越え社会との交流を生んだ富山の作品に触れてみてほしい。