トニー・アウスラー「Transmission」

　SCAI PIRAMIDEで、トニー・アウスラーによる個展「Transmission」が開催されている。

　トニー・アウスラーは1957年ニューヨーク生まれ。テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているかを探求してきた。おもに、デジタルアイデンティティ（個人に関する、電子化された属性情報の集合）や多くの人々が疑わない既存の信念体系、不安や恐怖を引き起こす「不気味なもの（uncanny）」（＊1）などをテーマに作品をつくり続けている。

　アウスラーは「映像イメージを箱型のテレビから解放した」アーティストのひとりであり、映像プロジェクションを取り入れたリサーチベースのプロジェクトを、世界中のギャラリーや美術館、パブリックスペースで発表してきた。また、長年ハル・フォスター、ノアム・M・エルコット、パスカル・ルソー、アン＝カトリン・ギュンツェルといった理論家たちによって学術的にも広く論じられている。

　本展では、初期における代表作から本展初公開となる最新作まで、アウスラーのアーティストキャリアを概観する。

　＊1──見慣れたものが見慣れない文脈にあるときに生じる奇妙で不安な感覚を表す心理学者フロイトの用語