EXHIBITIONS

松谷武判 Takesada Matsutani

松谷武判 二つの形 2022 作家蔵 Courtesy the artist and Hauser & Wirth
©Takesada Matsutani Photo: Nicolas Brasseur

 東京オペラシティ アートギャラリーで「松谷武判 Takesada Matsutani」が開催される。

 松谷武判(1937〜)は、60年を越える活動を通して、物質が示す表情や肌理(きめ)、存在感と生命の波動、流動を交錯させる優れた制作を続けてきた。1960年代前半に当時の新素材であるビニール系接着剤(ボンド)を使って有機的フォルムを生み出すレリーフ状の作品で具体美術協会の第2世代の俊英として名を馳せ、66年に渡仏。パリを拠点に、当時現代アートの最前線であった版画の領域で新たな取り組みを開始する。平面メディアにおける空間性と時間性の探求から、やがて表現は幾何学的であると同時に有機的なフォルムと鮮烈な色彩を特徴とするハードエッジの表現に移行。

 1970年代後半からは紙と鉛筆という身近な素材をもちいて制作行為の始原へと溯行し、黒のストロークで画面を塗り込めて生命的な時間を胚胎させる表現を確立。ボンドによる有機的な造形にも改めて取り組み、そこに鉛筆の黒をかさねた作品で新境地を拓く。作品は建築を取り込んだインスタレーションのかたちをとることも多くなり、同時にパフォーマンスでも独自の個性を発揮した。

 現在もパリを拠点に旺盛な制作を続ける松谷は、2017年のヴェネチア・ビエンナーレ、2019年のパリ、ポンピドゥー・センターでの回顧展など、改めて国際的な評価を高めている。近年はひとつの手法や表現にとらわれることなく、その制作はますます自由で大らか、大胆にして密やかな繊細さをたたえて進行。本展では、最新の調査にもとづいて構成される初期から最新作を含む作品、資料、映像など200点以上によって松谷武判の全貌を紹介する。