EXHIBITIONS

上村洋一「Waterforest」

hakari contemporary

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 hakari contemporaryで、上村洋一による個展「Waterforest」が開催される。

 上村は「瞑想的な狩猟」と名付けた自身のフィールドレコーディングを通して、人間と自然との内的で精神的なつながりを探求する。近年は、知床の流氷、アイスランドの氷河、アマゾン熱帯雨林、世界最大の滝イグアスなどのリサーチをもとに、没入的なサウンド・インスタレーション、絵画作品、サウンド・パフォーマンス、音響作品などを国内外で発表している。

 本展では、おもに上村がこれまで滞在してきた世界各地におけるフィールドレコーディングをもちいたサウンドスケープが展開される。知床の流氷、アイスランド氷河、アマゾン熱帯雨林、世界最大の滝イグアス、スイス・アルプスの泉、京都の地下を流れる琵琶湖疏水、そして満月と新月の日に録音された世界各地の海の音などをもちいたサウンド・インスタレーションが軸となっている。

 展示される作品は、上村がアマゾン川の船上で見た、空一面に広がる雲海から着想を得ている。「空飛ぶ川(Flying River)」と呼ばれるこの雲海は、熱帯雨林から蒸発散した大量の水分が空に向かって上昇し、巨大な雲を形成しながら雨を降らすことによって、水が再び森へと帰っていくアマゾンのエコロジーを象徴する現象だ。同時に、この「水(water)」と「森(forest)」の循環は人間がつくり上げた様々な境界線を軽々しく超えていく自然現象でもある。上村は、世界中で加速度的に蔓延する分断と暴力を乗り越えるためのメタファーとして、また世界各地の自然環境を移動してきた自らの身体感覚のなかにある普遍性を表現するため、本展を「Waterforest」と題した。

 本展覧会ではゲストキュレーターとして、2021年にブラジル・アマゾンと北海道・知床のフィールドリサーチを組みあわせ、新しい環境観を志向する共同制作展「冷たき熱帯、熱き流氷」展を上村と開催した黒沢聖覇が参加。両者は複数年に渡り、新しいエコロジー観についての継続的な対話をかさねてきており、本展の内容にもその対話が反映されている。

【2024年8月5日追記】
諸事情により会期を延期。新しい会期については決定次第お知らせ。