EXHIBITIONS

一野篤「右手で右手の甲に線を引く」

Roll
2024.06.22 - 07.14

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 Rollで、一野篤による個展「右手で右手の甲に線を引く」が開催されている。

 本展では、一野がデザイナーとしての仕事とは制作の動機と過程が異なる、可能な限り自身の目と身体を使って考え、そしてその作品の支持体自身によってつくらせることを意識して制作したという作品群(エフェメラ・冊子・立体など)を展示、販売する。

 本展に寄せて、一野は次のように述べている。

「誰も見たことのないような絵を描いてみたい、なんて高い理想を掲げ、白い紙を前に自分の内面を眺めてみてもそこは茫然としていて、表現したいと思えるモチーフはなにも見つからない。なけなしの想像力を最大化するには、そもそもの『絵の描き方』を考えることや、造形の根拠を自分の外に求めることは必須に思えた。目に見えるものを写し取るのでも、想像したことを描くのでもないやり方で。

 漫画『ブラックジャック』に、彼が自分で自分の腹を裂き手術を施すシーンがある。それはもちろん彼にしかできない離れ業として描かれているのだけど、そのおもしろさとは別に、なにか引っかかるものがあった。

 例えば、紙・写真・既製品など、目の前にある物が、それ自身(の持つ素材や記号としての特徴)を起点として造形を立ち上げるような、その肉体自身に絵を描かせるようなことは可能だろうか。そのとき、線は予測した軌道を逸れて、偶然とも必然ともつかないような場所に着地するのだろうか。

 絵を描くことと、傍観者であることの間で、あわよくば想定外の驚きに出会ってみたい。このフィクションめいた方法を使って、とにかくその成り行きを眺めてみたいと思う」(展覧会ウェブサイトより)。