鍵岡リグレ アンヌ「Undersurface」

　MAKI Gallery（天王洲）で、鎌倉を拠点に活動する作家・鍵岡リグレ アンヌによる個展「Undersurface」が開催される。

　2014年に制作を始め、現在も鍵岡の制作活動の主軸となっている水面をモチーフとした「Reflection」シリーズが10周年を迎えるにあたって、その原点をふり返り、月日とともに発展を遂げてきた最新作を展示。

　本展タイトルである「Undersurface」には、「表面上の形象だけではない隠れた層や不可視の世界を表現したい」という鍵岡が当初から自身の作品に込める強い想いが現れている。本シリーズで作家が追求しているのは、水面に映し出される像を再現することではなく、私たちの目に見える世界の下や裏側に隠れているもの、例えば自然をかたちづくるエネルギー、その場所に漂う雰囲気や感覚、かたちを持つものが本来のかたちを失い抽象化されていく過程で生じる動きや力をとらえ、それらを絵画として画面上に生み出すことだ。

　そうして生み出される作品は、決して鍵岡自身の解釈や特定の物語を示すものではなく、言葉や具象的なイメージによって作品が規定されることを避け、観者の自由な想像力に働きかける絵画そのものの可能性を探究した結果生まれたものだ。

　本展では、鍵岡が当初よりこだわり続けている色彩の追求に重点を置き、色味や彩度の押し引き、調和関係を各作品で探っている。完成作品とともに展示される水彩画の習作は、鍵岡独自の色づかいと立体性が生まれるプロセスにより深く想いを馳せる機会を与えるだろう。