イ・カンホ、橋本知成、太田琢人、矢口周太郎「Not Quite」

　PARCELで、イ・カンホ、橋本知成、太田琢人、矢口周太郎による展覧会「Not Quite」が開催される。

　本展では、4人のアーティスト、デザイナー、ショップオーナーの作品を通して、家具や物がもつ従来の用途からそれらを切り離すことで、デザインすること、形を生み出すことと、形そのものについて考えることを促す。

　ソウル拠点のイ・カンホは元々彫金を制作していたが、現在は工業用のワイヤーやロープを鍵編みしたベンチや照明、伝統的な七宝焼きをベースにした作品を制作。ソウル郊外で暮らしていた祖父から身の回りの物を自分でつくることを叩き込まれたイは作品を通して、世に溢れている素材に対しての工夫とそれを駆使した新たな造形について気づかせる作品を多く残してきた。

　橋本知成は信楽を拠点に活動しており、土を素材にやきものと、時にはモルタルを組みあわせた彫刻作品で知られている。やきものが持つフラジャイルなイメージとモルタルが持つマスキュリンな印象を組みあわせながら、素材間の緊張感を通してフォルム、重量、重力について考えさせる作品を制作している。

　デザイナー・太田琢人は、日常の観察を通して作品を発表している作家だ。そこには一貫してアウトプットの造形に向かう姿勢と、クリティックとしての視点もあり、生活を通しての取捨選択や物事の認知、社会システムなどと作品テーマは広い。既存の枠組みにとらわれることなく、インテリアプロダクトからインスタレーションまでを横断しながら発表を続けている。

　矢口周太郎は、東京都内で「YOU ARE WELCOME」というインテリアショップを営む。巨匠のモダンデザイン家具から作者不明のものまで、その特異な審美眼によって選び抜かれた品々は不思議な調和を保つ。フォルム、色彩という点においてユニークなプロダクトたちは、矢口のフィルターを通し、新たなコンテクストを帯びた状態で再び世に出される。