EXHIBITIONS

ミヤギフトシ x ハナ・クインラン & ロジー・ヘイスティングス「Echo in the Memory」

2024.02.10 - 03.09

Futoshi Miyagi Reading Brokeback Mountain in Kadena

Hannah Quinlan & Rosie Hastings Gaby 2018

 Yutaka Kikutake Galleryで、東京を拠点に活動すミヤギフトシ、およびロンドン在住のアーティストデュオ、ハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングスによるグループ展「Echo in the Memory」が開催されている。

 ミヤギは、セクシュアルマイノリティとしての自身のアイデンティティとの対話を軸に、歴史の影で見過ごされてきたささやかな感情の揺らぎを、写真、映像、テキスト、インスタレーションといった様々な手法で表現してきた。近年は出身地である沖縄を舞台に、米兵と沖縄人男性との間に生まれ得た関係性をテーマに紡ぐ複合プロジェクト「American Boyfriend」シリーズを開催。本展で展示されている映像作品「Reading Brokeback Mountain in Kadena」(2016年)では、惹かれ合う二人の男性を描いた同名小説の一場面を朗読するミヤギの姿が映し出されている。朗読は、登場人物の二人が幼い頃に示唆された暴力と、その連鎖が想起される場面にさしかかり、淡々と続いていく。

 公共空間における権威、権力、あるいはそれらによって形成される見えない支配と服従の構造を問うハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングス。制作は徹底した資料アーカイブのリサーチに基づき、その形式は絵画、映像、パフォーマンス、出版、インスタレーションなど多岐にわたる。本展においては、2018年制作の映像作品「Gaby」を展示。アーティストの親友にちなんで名付けられた本作では、ゲイ・カルチャー(その表象、政治、人間関係)と警察(その戦略と集合体)の交わりを3章形式で表現している。権力とそれ以外の交歓、あるいはマイノリティのふるまいの観察を通じて出来事に介入し、鑑賞者との間に感情的で官能的なつながりを作りたいというハナ&ロジーの姿勢は、嘉手納で二人の男性についての朗読を続けるミヤギフトシの姿にも相通じるものがある。

 クィア周縁のゆらぎを多様な形式ですくい取るミヤギフトシと、歴史・文化的対立の構造を非階層的な視点から再提示するハナ・クインラン&ロジー・ヘイスティングス。日英の作家による新鮮なプレゼンテーションで構成された展示となっている。