吉野辰海「此処へ」

　Gallery 58で、吉野辰海による個展「此処へ」が開催される。

　吉野は1940年宮城県生まれ。59年武蔵野美術学校（現・武蔵野美術大学）油絵科入学し、60年、前衛芸術グループ「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」のメンバーとして活動した。70年代末より現在まで、一貫して犬をモチーフにした作品を主軸に発表している。

　本展では、新作のドローイング70点と立体作品2点を展示する。数年前から展開している「此処へ」シリーズの犬は、体内が空洞化し捻じ切れて、環境や生態系が破壊され混乱した世界や、活力や希望を喪失しつつある困難な時代を象徴しているという。この世界で生きてゆく意味や、何処でもない確かな各人の「此処」とは何なのかを彼は問いかけていく。

　本展では「此処へ」シリーズのほかにも、これまでテーマにしてきた「SCREW」、「唐辛子犬」、「投影装置の犬」ほか、葉書サイズを含むドローイングを多数紹介する。様々な姿に変貌していく吉野の「犬」は、人類や生命体、万物の永久運動（SCREW）など普遍的なものを内包していると言える。