EXHIBITIONS

森下大輔 写真展「存在するとは別の仕方で」

2023.08.29 - 10.03

©Daisuke Morishita, courtesy of PGI

 PGIで、森下大輔の作品展「存在するとは別の仕方で」が開催されている。

 森下大輔は1977年生まれ。2005年、「重力の様式(新宿ニコンサロン)」でのデビュー以来、一貫してモノクロ銀塩写真を用い、写真の純粋性を追求している。また近年は個展だけでなく写真集による表現にも意欲的に取り組み、17年より自身が主宰する写真集レーベルasterisk booksより写真集を出版した。自身の写真集だけでなく編集も担当。

 森下の作品は「存在」と「関係性」をテーマとしている。事象を見つめ、シャッターを切り、暗室でプリントを制作、印画紙の上に二次元の視覚表現として立ち上がらせる、という変哲のない写真行為の繰り返しのなかで、写真を通して世界の原質に触れようとし、世界という存在を証明することを希求し続けている。

 本展は、敬愛するフランスの哲学者、エマニュエル・レヴィナスの著書表題から取った「存在するとは別の仕方で」(合田正人訳)をタイトルとし、前作同様に6×7センチ判のカメラを用いて風景に対峙しながら、同時に、14年ごろより試行錯誤を続けてきた、4×5インチの大判カメラによるモチーフを写した作品の2つを紹介する。6×7の作品は、自身がこれまで被写体としてきた都市を離れて日本国内各地を周り撮影したという。

 写真には「何か得体の知れないもの」が写ると信じ、そこから人間や物の存在ということを思考し続ける、祈りにも似た森下の写真制作は、本作にて「もの」を撮影するという新たなスタイルとなって結実した。身の回りにある用を成さない「価値や意味が宙に浮いてしまったもの」が題材となり、抽象的な画を結んでいると言える。