松下真理子 個展「すべて水に映る」

　KEN NAKAHASHIで松下真理子の個展「すべて水に映る」が開催されている。

　松下は1980年大阪府吹田市生まれ。幼少期に性的暴力からの治癒と理解のために書きはじめた無数の詩を契機に、精神的な模索と外付けの蛇口を求め、芸術を志す。2004年、京都市立芸術大学美術学部油画専攻を卒業。工場での労働の傍ら独自の絵画表現を再開し、16年には《Margarita 7》をはじめとする作品群で第二回CAFFA賞（CAF・アーティスト・アワード）グランプリを受賞。翌年、ロンドンにてデルフィナ財団のレジデンスに滞在し、インド、ペルー、韓国、サウジアラビアなどの女性芸術家たちとの親交を結ぶなど、積極的に活動。「人間とは何か」を執拗に追い求め、死や痛みや絶望が忘れられていく社会に向かって、静かに抵抗するような作品を制作している。

　本展では、近年制作した大型のペインティングや、手製キャンバスのシリーズ「すべて水に映る」を紹介。色面で描かれた作品は緊張感と直感に満ちており、複雑で強烈なイメージは痛ましい過去や、虚弱で消えゆく声を感じさせる。