EXHIBITIONS

美しい本 ー湯川書房の書物と版画

『oedipus』望月通陽(著・型染) 1981年 神奈川県立近代美術館蔵 撮影:佐治康生

『心臓』小川国夫(著)1969年 神奈川県立近代美術館蔵 撮影:佐治康生

『谷崎潤一郎家集』谷崎潤一郎(著)1977年 神奈川県立近代美術館蔵 撮影:佐治康生

『雅歌』柄澤齊(木口木版画)1985年 神奈川県立近代美術館蔵 撮影:佐治康生

『神さまの四人の娘』辻邦生(著)木村茂(銅版画)1972年 神奈川県立近代美術館蔵 撮影:佐治康生

 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で、「コレクション展 美しい本 ー湯川書房の書物と版画」が開催されている。

 湯川書房は、湯川成一によって1969年に大阪市で設立。装幀や製本に意匠を凝らした限定本を出版し、小川国夫、加藤周一、谷崎潤一郎、塚本邦雄、辻邦生、車谷長吉など一流の文学作品を気鋭の美術家の作品と結びあわせた洒脱な装幀は「湯川本」として知られている。1970~80年代に興隆した限定本文化の担い手となった湯川書房は「美しい本」の創造を掲げ、版画家の木村茂、岡田露愁、柄澤齊、染色家の望月通陽、画家の戸田勝久らとも協働した。

 本展覧会は蒐集家の岡田泰三の寄贈による同館の所蔵品で構成されており、書物のユ–トピアをめざし、愛書家たちを魅了した湯川書房の全貌を紹介する公立美術館として初めての回顧展となっている。

 また印刷を母体に活字と版画との関係にも焦点を当てており、会場では湯川書房で多くの共作を残し、自らも出版工房を主宰する柄澤齊による木口木版の世界も〈肖像画〉シリ–ズを中心にあわせて展示されている。