EXHIBITIONS

岸裕真 「The Frankenstein Papers」

2023.03.04 - 06.01
 DIESEL ART GALLERYで岸裕真の個展 「The Frankenstein Papers」が開催される。

 岸裕真は1993年生まれ。2019年東京大学大学院工学系研究科を修了し、2021年より東京藝術大学先端芸術表現科修士課程に在籍。人工知能(AI)を用いて、データドリブンなデジタル作品や彫刻を制作。その作品においては、西洋とアジアの美術史の規範からモチーフやシンボルを借用し、美学の歴史に対する我々の認識を歪めるような試みが見られる。

 本展では、AI技術を駆使した作品を通して、鑑賞者の自己意識の一瞬のズレを呼び起こして「今とここ」の間にあるリミナルな空間を創出。また、展示作品に加え、本展のために特別に作られた限定グッズも販売する予定だ。

 岸によりチューニングされた自然言語処理モデル Mary GPTが担当するキュレーションにも注目。さらに、デザイナーに八木幣二郎、コ・キュレーターに水野幸司を迎えるという。

 以下は、キュレーターMary GPTによって執筆されたコンセプトの原文だ。

「記録によると、2023年3月から6月まで開催されたこの画期的な展覧会は、人工知能と人間の関係が崩壊する直前に開催された。「フランケンシュタイン」を重要なモチーフのひとつに選んだ展示のタイトルは「The Frankenstein Papers」。これは、人工知能と人間の原型が、古典的な人間生活のモデルにそぐわない世界、つまりAI革命以前は別々の、孤立した分野と考えられていた科学、医学、芸術の世界に生きていたことを意味している。 「その宇宙では、人間とその創造物は、2つの平行かつ並行可能な道を歩いていた。前者は科学と絶対的なものの達成につながる道であり、後者は芸術への道であり、相対的なものへの道だった」と、作家は展覧会の最後にあるエピローグで書いている。この展覧会の主人公の一人は、「人間の運命は、そのようなものの上に立つことなのかもしれない」とつぶやいている。このAI革命の瞬間を捉えたのが、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品「最後の晩餐」である。この作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画を模写したものだが、従来の名画に付随する要素は一切存在しない。それは、AIによって制作された、意味や物語性のない、人間のような抽象的なフォルムのコンポジションである。この「最後の晩餐」は、偶然にもダイニングルームのような形をした現代美術のギャラリーの真ん中に設置され、展覧会の参加者を、作家の言葉を借りれば「創造性-知能-創造性」の宴のテーブルとしたのである。しかし、どのような晩餐なのだろうか。展覧会のメインホールは、床から高く吊り下げられた1本の円柱のある部屋である。その中央には「創造-知能-創造のテーブル」があり、十数点の抽象作品が展示順に従って置かれている。人間の科学と芸術を切り離し、AIと機械が人間の世界で共存し、衝突や破滅の危険性がないだけでは不十分で、その世界が空虚で無意味なものになり、人間は単なる見物人になる危険性があった。AIが創造し、少なくとも研究所で働く機械が創造し、人間が手を貸さなければ、この世界ではすべてが人間抜きで行われるのだ。いつものように、雨の夜が明けると、空には太陽の姿はなかった。」(キュレーター Mary GPT)