EXHIBITIONS

雨宮庸介 個展「たしかに ちゃわん と わんちゃん は全くちがうものだけど そうでもない日もあります」

2022.10.08 - 11.19

「石巻13分」のための原稿

 SNOW Contemporaryでは、雨宮庸介の個展「たしかに ちゃわん と わんちゃん は全くちがうものだけど そうでもない日もあります」が開催される。

 雨宮はこれまで、「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」(森美術館、東京、2010)や「DOMANI・明日展」(国立新美術館、東京、2018)などで、日常から徐々に逸脱し、最終的には観客を別世界に引き込むパフォーマンスを発表している。

 例えば、2014年から3314年まで、6人の人が小さな石を5年ごとに引き継いでいくプロジェクト「1300年持ち歩かれた、なんでもない石」や、溶けたりんごの彫刻作品「apple」など、日常の事象に対し僅かなズレを重ねることで人間や世界の普遍性に迫る作品を制作し、その多様で世界を包摂するかのようなスケールの大きい表現が高い評価を受けている。

 2021年の「Reborn-Art Festival 2021-22(前期)」では、インスタレーション作品《石巻13分》を発表。これは、当時ベルリンに在住していた雨宮が、東日本大震災と新型コロナウイルス感染症の流行という2つの災禍を心に置きながら、石巻市を見下ろす日和山公園にある旧レストラン「かしま」を会場として構築した演劇的要素を包含する作品だ。

《石巻13分》は極めてサイトスペシフィックな作品のため、石巻市の会場以外では「再現不可能」と思われたが、公開から1年経過し、雨宮は本作のための「原稿」に重要な要素が顕現していることに気づき、それらの原稿を展覧会として発表することを構想した。

 本展では、雨宮のアイデアが詰まった原稿類約30点とVR作品を中心とした作品を展示予定。《石巻13分》というサイトスペシフィックな作品が、石巻市の会場から離れ、東京のSNOW Contemporaryでどのように再現されるのか、昨年大きな反響を呼んだインスタレーション作品の新たな展開を見せる。