EXHIBITIONS

HIRAKU Project Vol.13

村上華子「du désir de voir 写真の誕生」

村上華子 無題(ニエプスの庭) 2022

「HIRAKU Project」は、ポーラ美術振興財団の若手芸術家への助成を受けた作家を、ポーラ美術館の「アトリウム ギャラリー」で紹介する展覧会シリーズ。13回目となる今回は、パリ在住のアーティスト・村上華子による「du désir de voir 写真の誕生」展を開催する。

 村上は1984年東京都生まれ。2007年東京大学文学部思想文化学科美学芸術学専修課程卒業、09年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。2013年度ポーラ美術振興財団在外研修員(パリ)、14年にル・フレノワ フランス国立現代美術スタジオに在籍。現在はパリを拠点に活動している。

 古典的な写真技法を扱い、見ることの根源に立ち返ろうとする村上は、19年にアルル国際写真祭新人賞にノミネートされるなど、近年とくにヨーロッパで注目される気鋭作家のひとりだ。

 村上は制作の初期から一貫して、網膜に映る像を他者と共有するための技術とその歴史、そして目の代替物として像を焼きつけるもの、その物質性(マテリアリティ)に関心を持ち続けてきた。ダゲレオタイプのような古典技法による写真、100年前の未開封のガラス乾板に自然発生したイメージをとらえる作品、金属の活版を用いた作品、あるいは詩作や映像作品など、多岐にわたる村上の作品はいずれも、歴史を往来する緻密なリサーチと卓越した言語感覚に支えられている。

 本展で村上は、現存する世界最古の写真を残したとされる、ニセフォール・ニエプス(1765〜1833)の足どりをたどる。展示は新作を中心に構成され、ネオン管を用いた作品をはじめ、村上の新たな展開を紹介する。

「写真」の発明というニエプスの輝かしい功績の裏側には、数え切れないほどの「失敗」が存在していた。今回の展覧会は、村上がその歴史の陰に寄り添い、ニエプスの言葉を丁寧にひも解き検証を重ねながら、幾多の失敗を現代に再現しようとする試みとなる。