画家・猪熊弦一郎(1902〜93)は、香川県高松市で生まれ、東京美術学校で藤島武二に師事。拠点をパリ、ニューヨーク、ハワイと転々とし、画風も具象から抽象へと大きく変化を遂げながら、生涯にわたって絵を描き続けた。
本展は、「いちどに1ダースの猫を飼っていた」ほどの猫好きとして知られる猪熊が描いた猫の絵を、作風や技法、他のモチーフとの組み合わせなどの複数の視点から紹介する。
猪熊が描く猫の姿は、写実的なスケッチ、シンプルな線描、デフォルメした油彩画と実にさまざまであるが、どれも猪熊らしいユニークな視点でとらえられているのが特徴だ。
もちろん、猪熊弦一郎の芸術は猫だけにとどまるものではないが、本展に揃えられた愛情あふれるような作品群は、猪熊の奥深い世界に触れるきっかけとしてもふさわしいものになるだろう。