ジュゼッペ・アルチンボルド(1526〜1593)は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家。果物や野菜、魚や書物といったモチーフを組み合わせ、寓意に満ちた肖像画を手がけたことで知られている。
その油彩作品数は数少ないが、本展では世界各国の主要美術館から、油彩約10点を中心に水彩、素描など約100点が集結。特に、アルチンボルドの代表作である「四季」から《春》《夏》《秋》《冬》の4点が初めて並ぶことに注目したい。同作は、1563年に最初の連作が描かれ、その後数回にわたり、別バージョンが制作されている。
「四季」は、各作品がそれぞれの季節の植物で構成されており、春から冬までが若年から老年までの世代を表している。季節を特徴づける「産物」という小さな視点で構成されながら、「季節」という大きな視点を表現する同作は、ミクロコスモスとマクロコスモスの対応、という古来の考え方に根ざしているという。
17世紀以降、一度は時代に忘れ去られ、1930年代にシュルレアリストたちによって”再発見”されたアルチンボルド。多くの場合は「だまし絵」というコンテクストにとどまり、現代の視点から紹介されてきた。しかし、本展では、アルチンボルド芸術のもととなったレオナルド・ダ・ヴィンチのグロテスクな素描のほか、ハプスブルク家の美術工芸品などもあわせて展示することで、アルチンボルドを16世紀の文脈に置きなおし、最新の知見とともに紹介する。