東京国立博物館 平成館で開催予定の特別展「名作誕生―つながる日本美術」に、室町時代に活躍した水墨画家・雪舟等楊(1420~1506?)の《倣夏珪山水図(ほうかけいさんすいず)》(山口県立美術館寄託)が出品されることが発表された。
《倣夏珪山水図》は、1933年に東京で非公開のオークションに出品されて以来、個人蔵となり行方不明となっていた「幻の作品」。2017年に84年ぶりに再発見され、雪舟の真筆と確認された。昨年末に山口県立美術館の「雪舟発見!展」で展示されたが、東京での一般公開は今回が初めてとなる。
同作が展示される特別展「名作誕生―つながる日本美術」は、作品同士の影響関係や共通する社会背景に着目し、地域や時代を超えたさまざまな名作誕生のドラマを、国宝・重要文化財含む約130件を通して紹介するというもの。その中で《倣夏珪山水図》をはじめとする雪舟の作品は、第2章「巨匠のつながり」の中で「雪舟と中国」のつながりをテーマに、南宋時代の画家である夏珪(かけい)や玉㵎(ぎょくかん)などの作品とともに紹介される。
室町時代の画家たちは、当時最高の価値を持っていた中国絵画風の作品を描くことを求められており、「倣夏珪山水図」もそのような流れを汲む作品のひとつ。『國華』編輯委員で学習院大学教授の島尾新は「水墨のみずみずしさを活かした夏珪の絵に対して、岩のかたちも梅の枝振りも力強く、色もきっちりと着けられて、かなり雪舟風のアレンジになっています」と語る。
本展では雪舟の作品9件が出品予定(会期中、展示替えあり)。《倣夏珪山水図》の展示期間は5月8日~27日となる。