日本の美術品市場が堅調さを維持している。
「一般社団法人アート東京」(以下アート東京)は、「日本のアート産業に関する市場調査」をインターネットアンケート会社が契約するモニターを対象に、2017年10月24日〜31日にかけて実施した。
調査は2段階で、1次調査は政府統計を基に、性・年代、職務状況(有職 / 無職)、年収(有職者は個人所得、無職者は世帯所得)を日本全体の分布に近いかたちで割り付け。2次調査では、30代・40代で過去3年間に美術品を10万円以上購入したセグメントA(コレクター)と、30代・40代の年間の博物館・美術館訪問回数が4回(3ヶ月に1回)以上かつ美術品購入経験なしのセグメントB(愛好家)の2セグメントを対象に調査した。有効サンプル数は1次調査が21436(前回20541)サンプル、2次調査が248サンプル(セグメントA)、233(セグメントB)だったという。
この調査から算出された日本国内のアート市場規模は、古美術や洋画・彫刻・現代美術などの「①美術品市場」(2437億円)、グッズやカタログなどの「②美術関連品市場」(306億円)、美術館入場料や日本各地で開催される芸術祭消費額を含む「③美術関連サービス市場」(517億円)となっており、総額は推計3270億円。これは前回の3341億円から71億円の減少となっている。
しかし、ここで注目したいのはもっとも規模の多い「美術品市場」だ。
グッズやカタログなどの「美術関連品市場」(306億円)が前回の493億円から大幅な下落を見せるなか、「美術品市場」は前回調査の2431億円から6億円の微増。ギャラリー・百貨店を中心とした、マーケットの雲行きは決してネガティブではないことがうかがえる。美術品の市場規模は、洋画がもっとも多い556億円。次いで陶芸の432億円、日本画の386億円、現代美術(平面)の364億円などとなった。
販売チャネル別では、国内画廊・ギャラリーの726億円(30パーセント)に次いで百貨店が685億円(28パーセント)。国内画廊・ギャラリーが前回の792億円から数字を減らすなか、百貨店は627億円から58億円の伸びを見せており、「美術品市場」を押し上げている結果だ。アート東京はこの要因について、「百貨店各社の発表によると、ここ数年衣料品などの売上げが減少していましたが、2017 年は富裕層向けの対応や、百貨店が得意とする外商による積極的な営業展開が、景気の回復とともに効果を上げつつあり、美術品の販売でも成果を挙げています」としている。
グローバル市場が2014年に過去最高の682億ドル(約7兆6000億円)を記録して以降、16年には11%減の566億ドル(約6兆3000億円)となるなど減少傾向(出展=「The Art Market 2017」Art Basel and UBS)にあるなか、日本の美術品市場は堅調を維持しており、今後もこのペースが維持されることが期待される。