落合陽一「大阪・関西万博シグネチャーパビリオン『null²』」(夢洲 4月13日〜10月13日)

特製ミラーでつつまれた「null²」は、「いのちかがやく未来社会のデザイン」という万博の開催テーマを反映したかのように輝いていたが、中にはいると『新世紀エヴァンゲリオン』における人類補完計画のようなディストピア的な社会像(=持続や普遍ではなく終わりや変化)を表現していた点で特異だった。なかでも「きみたちがおはなしをひとつにしてくれるの?」という問いかけは象徴的であり、予約なしで出入りできるコモンズ館(世界各国のブース展示)などで繰り返される「SDGs」という標語(ひとつのストーリー)に対して、立ち止まって思考することを要請する。落合陽一の仕事をアートシーンがどのように受け止めるのか。その責任こそが問われ続けていると感じた。
サディヤット島(アブダビ)の都市開発

万博鑑賞後、はじめて中東を訪れた筆者にとってサディヤット島は「まるでずっと万博しているみたい」だった。現在も開発がつづく文化地区には、ルーヴル・アブダビ、チームラボ・フェノメナ・アブダビ、グッゲンハイム・アブダビ(建設中)などが所狭しと並んでいる。ルーヴル・アブダビでは、ユーラシア主義的な想像力に基づいているのか、自国はもちろんのこと、中国からレバノン、パキスタン、エジプト、イタリア、フランスまでの彫刻や彫刻や絵画、地図などが詰め込まれることで、中東地域の文化的かつ地政学的な価値を誇示していた。そうした展示施設に取り囲まれて鎮座する3つの立方体、アブラハム・ファミリーハウスはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の礼拝空間を並列したものであり、7ヶ国が集まって成立したアラブ首長国連邦の複雑な共生を感じさせる。一連の体験は、本来的に万博が達成すべき景色を圧倒的な財力によって叩きつけられるようであった。
「大ヒスイ展」Pokémon LEGENDS Z-A ミアレ美術館
最後に挙げるのはゲーム「ポケモン」最新作のなかに登場するミアレ美術館の企画展だ。内容は『Pokémon LEGENDS アルセウス』(2022年)の舞台・ヒスイ地方を題材として衣装やアイテムなどに詳細なキャプションを加えたもの。本作発売と同年には、国立科学博物館で「ポケモン化石博物館」(巡回展示)が開催されたが、シリーズのファンにとってはそうした展覧会と比べても遜色なく知的好奇心をくすぐる。「人とポケモンがどのように共生するようになったのか」を問う本展は、現実世界の地理を改変してマップ化するという慣習(初代は関東地方、本作はパリなど)と相まって、そして市民に先立って/後からそこに生息するポケモンとの共生を通じて、人間に限らない他者理解について考えるためのヒントが詰まっている。子どもたちの反応が気になる展覧会だった。























