有識者が選ぶ2023年の展覧会ベスト3:石倉敏明(人類学者/秋田公立美術大学准教授)

数多く開催された2023年の展覧会のなかから、有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回は人類学者/秋田公立美術大学准教授・石倉敏明のテキストをお届けする。

文=石倉敏明

「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」展示風景より(東京国立近代美術館)
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「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」富山県美術館・青森県立美術館・東京国立近代美術館/3月18日~5月21日・7月29日~9月24日・10月6日〜12月3日

「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」展示風景より(東京国立近代美術館)

 棟方志功の生命と初期のキャリアを育んだ青森、作家活動の中心地となった東京、太平洋戦争中の疎開先として選ばれた富山。3つの地域は、作家の生涯にとってそれぞれ重要な「転機」をもたらした。各地を代表する3つの美術館で開催された本展は、各地での活動を丹念に調査・比較することで、「奇人」「天才」といった作家のパブリックイメージを更新し、地方性と世界性を調停する棟方のユニークな特性を浮き彫りにしていた。彼が交流した人々との膨大な応答の記録から、生涯を通じて大胆に変化し続ける作家の実像が示された、堂々たる回顧展となった。

Material, or 」21_21 DESIGN SIGHT7月14日〜11月5日