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アートと気候危機のいま vol.7「気候危機とアートのシンポジウム アートセクターはどのようにアクションを起こせるか」レポート(後編)【2/6ページ】

毛利悠子と松﨑友哉。ふたりのアーティストの事例から

 次に、Yutaka Kikutake Gallery代表の菊竹寛。まず、第60回「ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」にて、日本館の代表として参加しているアーティスト・毛利悠子の作品を取り上げる。会場では「モレモレ」と「Decomposit ion」というシリーズを組み合わせ、《COMPOSE》というタイトルのもと壮大なインスタレーションを展開。前者は地下鉄駅構内の水漏れ対策から着想を得たインスタレーション作品で、水が装置全体を循環し、設置された場所の環境に反応しながら様々な表情を見せてくれる作品。後者は、果物に電極を刺してその抵抗値を測り、音や光に変換するものだ。

 特筆すべきは、いずれも基本的なシステムに関わるコンピューターやオーディオ機器を除いて、ほぼすべて現地で材料を調達したこと。これにより輸送に関わる様々な負担が低減したと言える。

 また、日本館の天井と床面には外部環境に接続する開口部がもとから設けられている。ある4月の日には夕立が降り、流れ込む自然の風雨と会場内の作品たちが奏でる音が共鳴するという、美しい瞬間に立ち会ったという。

 そんな果物たちは、現地の果物卸業者とかけあって、商品にならないものを譲り受けたもの。腐敗が進むとブランデーのようないいかおりが立ち込めることもあり、それらが朽ちたのちには、コンポストとして土に還すという試みも。

 次いで紹介されたのは、ロンドンに20年以上暮らすアーティスト・松﨑友哉。自身の生活環境に目を向け、採取した野草から色素を抽出しドローイング作品を制作したり、野草を調理して振る舞うワークショップなども手がけている。

 ユニークなのは、松﨑も関わるボランティア団体「Bethnal Green Nature Reserve」。ロンドン市内で育てた野草から薬をつくり、ホームレスに提供する団体で、アーティストだけで なく、科学者や学生なども活動に参加しているとのこと。

 「東京にあるギャラリーとして、一体何ができるのかずっと悩んでいたが、これらの試みに勇気づけられた」と語る菊竹。2024年11月には新しく京橋にスペースを設けるとのことで、ふたつの拠点から気候危機についての活動や情報発信を広げていきたいと締めくくった。

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