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アートと気候危機のいま vol.7「気候危機とアートのシンポジウム アートセクターはどのようにアクションを起こせるか」レポート(後編)【3/6ページ】

対外連携と組織づくりのためのステートメントのあり方

 続いては、十和田市現代美術館館長の鷲田めるろ。十和田市現代美術館ではサステナビリティについてのステートメントをすでに発表しており、その意図としてまず挙げられたのが、ほかの地域団体と足並みを揃え連携するというもの。

 同地でサステナビリティについて先駆けて取り組んでいたのが、十和田奥入瀬観光機構。奥入瀬渓流では紅葉シーズンのオーバーツーリズムが課題で、サステナブルツーリズムの推進を進めていた。そこに十和田市現代美術館も加わり、地域一体となった取り組みがスタート。対外的に立場を表明するためにも、ステートメントとして宣言することの重要性を説かれた。

 また美術館内での組織づくりの面でも、ステートメントは重要な役割を果たす。同館では『ゼミナール 経営学入門 第3版』(日本経済新聞出版社)に掲載されている企業を取りまくステークホルダーのモデル図を参考に、美術館におけるステークホルダーを再定義している。

 それによれば、美術館を中心に置いたとき、周囲を取り巻く4つのステークホルダーとして、「アーティスト」「スタッフ」「来館者」「行政・協賛者」が挙げられる。これらの利害は対立するケースもあり、あらゆる局面でその時何を優先するか判断する必要がある。近年、ここに「サステナビリティ」を加えた5項目での運用をしているとのこと。

 「例えば、サステナビリティを重視した際に、来館者の快適度が下がるというケースもあり得る。そこでどう判断をすべきか。トップダウンでアクションを決めるのではなく、美術館の全スタッフが各自で判断できる基準を設け、すべての運営や事業の判断基準にサステナビリティ を加えるということをしている」(鷲田)。

 対外的な連携の取り組みにも、組織のなかの意志決定のシステム構築のためにも、ステートメントを宣言することが有効なのだと述べられた。

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