「REALITY STUDIO」は、ドイツのデザイナー、スベンヤ・スペヒトによって立ち上げられた「いま、ここにあるもの」をテーマに掲げるファッションブランド。スベンヤは、ファッションとプロダクトデザインを学び、パリ、ドイツ、中国のデザイン業界で働いたのち、2005年に同ブランドを立ち上げた。
衣服を通した人々の相互作用を探求するスベンヤ。手仕事による衣服など昔の文化を参照するスベンヤの真の技術に対する関心は、やがてトレンドを重視する風潮や大量生産への疑問へと変化する。スベンヤはその疑問をファッションの社会的かつ文化的側面として受け入れ、つねに変わりゆく状況に適応しなければならない身体の「ホーム」となる衣服を同ブランドで発表している。
19年夏のコレクションは、スベンヤが拠点とするポルトガルにあるリゾートの地名「Moncarapacho(モンカラパッショ)」がタイトル。夏の空や海、地理的に近いモロッコのサハラ砂漠や民族衣装、そしてアンリ・マティスの絵画やダニエル・ビュレンによるパブリックアートなどから着想を得たコレクションだという。
より平面的かつ装飾的な画風で「色彩の魔術師」と謳われるマティス。その作品は、モロッコやイスラム世界を訪れた際に得たインスピレーションを制作に取り入れたことでも知られる。かたやビュレンは65年以降、自身の論理をもとに8.7センチ幅に統一したストライプ柄を使用したインスタレーションを手がけるアーティストだ。
つねに感覚を頼りに色彩の可能性を追求し続けたマティスと、コンセプチュアル・アーティストの第一線で活躍するビュレン。この両者を同時にトリビュートする衣服は、着る者にいったいどのような体験をもたらすだろうか。