日本海側で最も大きな島・佐渡は、暖流と寒流が交わり、特異な文化や生態系が育まれてきた場所。椹木野衣、宇川直宏、小川弘幸の3氏をアドバイザーに迎え、2016年から市民有志が実験的に始めた「さどの島銀河芸術祭」が、今年も開催される。
芸術祭の理念でもある今回のテーマ「過去と未来の帰港地」は、佐渡がかつて北前船や交易船の寄港地であり、佐渡金山の積み出し港だったことに由来する。
「日本地図を90度回転し、中国大陸を下にすると、日本海が湖のように見え、中央に佐渡島が浮かぶ。物資の寄港地は、文化の集積地でもありました。この文化の坩堝のような場所で、過去と未来を見つめながら芸術祭を巡ってほしい」とコミュニケーション・ディレクターの吉田モリト。
伝説や民話が語り継がれ、30以上の能舞台が残されている佐渡。120地区の鬼太鼓をはじめ、祭りや芸能も盛んだ。作家たちは、島の自然や伝統文化からヒントを得て、失われつつある日本の原点をアートで表現する。島は東京23区の約1.5倍の広さがあり、交通手段はレンタカーか路線バス。車なら駆け足で1日、路線バスなら2日あればイベント以外の全作品を鑑賞可能だ。吉田は言う。
「佐渡には日本の原風景があり、タイムスリップしたかのような町並みも堪能できる。夜になれば満点の星空。喧騒から離れ、島の時間に身を委ね、自分自身について考える場になればと願っています」。
コミュニケーション・ディレクター 吉田モリトさんに聞くみどころ
作品は4エリアに設置されます。最北端のAエリアへはバスの便が少なく不便ですが、車窓に映る海岸線は絶景そのもの。Bエリアの両津港では、『わたしは真悟』に佐渡が描かれた縁で、楳図かずおの特別展示を行います。Cエリアは野生のトキが訪れる新穂の田園地帯で、佐渡米のおにぎりを提供する島カフェを開催。Dエリアは岩首の昇竜棚田を舞台に、アーティスト・∈Y∋が88人のシンバルを指揮します(島外のシンバラー募集中!)。昨年30周年を迎えた「アース・セレブレーション」、「大地の芸術祭」や「水と土の芸術祭」とも同時期に開催されているので、ぜひ併せてお出かけください!
展示アーティスト
∈Y∋、イーサン・エステス、奥野栄次郎、大山健治、梶井照陰、佐渡アール・ブリュット、シャルル・ムンカ、juji、できやよい、デフ・パペットシアター・ひとみ、戸田かおり、DOMMUNE、本間秀昭、松崎友紀、吉田モリト ほか
(『美術手帖』2018年8月号「この夏・秋に行きたい!全国アートスポットガイド」より))