「Jerūiyq: Journey Beyond the Horizon」(第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展カザフスタン館、ヴェネツィア海洋史博物館/2024年4月20日~11月24日)
20世紀以降の飢饉や核実験の痕跡、枯渇が進むアラル海など、カザフスタンには西欧主導の近代化によるトラウマが残る。それを背景に、本展はカザフスタンの伝説で語られてきた理想郷である「Jerūiyq(約束の地)」という切り口から、1970年代から現在に至るまでのアーティストによるユートピアの表象を軸に、カザフスタンの美術史におけるひとつの視座の確立を試みる。同地および中央アジアにおける自然観やコスモロジーを参照した絵画、サウンド、インスタレーション、映像を通して、「脱植民地フューチャリズム(decolonial futurism)」のヴィジョンを提示する。規模や諸条件から参加作家の数は限られるが、今後の展開の可能性を示す意欲的な展覧会であった。