京都市の京都市京セラ美術館で、特別展「生誕140年記念 染織家 山鹿清華─宙翔ぶイマジネーション」が開幕した。会期は12月20日まで。
明治から大正、昭和へと至る日本の染織史において、革新的な足跡を残した染織作家・山鹿清華(1885〜1981)。1900年に西陣の図案家に師事し、10年には神坂雪佳に師事した。自身で図案から織りまでを一貫して手がける「手織錦(ておりにしき)」を考案し、27年の帝展で特選を受賞。官展や日展での発表にとどまらず、祭礼装飾や奉納懸装品、さらには建築や豪華客船の室内装飾まで幅広く手がけ、69年には文化功労者に選ばれた。
本展は、染織芸術のパイオニアである山鹿の仕事を回顧する、40年ぶりの大規模な回顧展である。会場はプロローグとエピローグを含む全6章で構成されている。
プロローグ「山鹿清華とはなにものか──《和蘭陀船》、志を乗せた出帆」
京都の工芸界の第一線で活躍した山鹿であるが、1985年の「近代染織の創始者:山鹿清華」展以来、その全貌を総覧する機会は長らく失われていた。あらためて山鹿の創作世界を紹介する入り口となる本章では、27年、新設されたばかりの第8回帝展・美術工芸部門に出品され、満場一致で特選に選ばれた《和蘭陀船(おらんだぶね)》織の下絵が展示されている。10代から図案と絵画の双方で研鑽を重ねた山鹿が、作家としての評価を確固たるものとした記念すべき一作であり、その創作世界をひも解く導入となっている。

1章「指先で描く──手織錦の世界」
山鹿の代名詞である「手織錦」は、自身によって名付けられた造語である。最大の要素は、図案の構想、下絵制作、糸の選定、そして織り上げに至るまでの全工程を作家ひとりが手がける点にある。色彩や糸の選択を自ら行い、従来の染織の概念を超えて織りの技法そのもので絵画的・立体的な表現をつくり出した点こそ、山鹿が「染織芸術のパイオニア」と呼ばれるゆえんのひとつだ。

会場には、山鹿がのこした多種多様な糸も展示されている。山鹿にとって糸はたんなる素材ではなく、作品の質感や空間性を決定づける重要な表現要素であった。絹や綿といった天然繊維から、化学繊維、再生糸にいたるまで種類は多岐にわたり、通常の織物では用いられないものも取り入れられた。

例えば《闘士カンガルー》(1960)には、その実験精神が顕著に表れている。ナイロン糸や透明なビニール紐などの異素材を織り込むことで、従来の糸だけでは表現できない力強い表面の凹凸を生み出している。別の展示室では、染織作家・蔵田和枝による同作の再現展示や制作過程の動画も紹介され、異素材が織り込まれていく実際のプロセスを深く理解できるよう工夫されている。

また、高さ3メートルを超える大作《星座・月・ロケット》(1958)も圧巻だ。ロケットや噴煙のモチーフは横糸を主体に密に織り出されるいっぽう、周囲の星座群は縦糸の効果を用いて軽やかに表現されている。この織り方によるコントラストは、山鹿の卓越した織りの技術と造形感覚の賜物と言える。
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