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「メキシコへのまなざし」(埼玉県立近代美術館)開幕レポート。いかに日本人アーティストはメキシコ美術の「精神」に呼応したのか

埼玉・浦和の埼玉県立近代美術館でメキシコ美術が日本の美術に与えた影響を様々な角度から検証する展覧会「メキシコへのまなざし」が開幕した。会期は5月11日まで。

文・撮影=安原真広

展示風景より、左から岡本太郎《赤》(1961)、《建設》(1956)川崎市岡本太郎美術館蔵

 埼玉・浦和の埼玉県立近代美術館で、戦後日本がメキシコ美術に向けたまなざしを様々な角度から検証する展覧会「メキシコへのまなざし」が開幕した。会期は5月11日まで。担当は同館学芸員の吉岡知子。

 本展は全3章構成。冒頭の第1章「メキシコ美術がやってきた!」では、日本においてメキシコ美術が高い注目を浴びるようになった、1950年代を振り返る。

会場エントランス

 日本でメキシコ美術が注目されるようになった最大の契機は、1954年の日墨文化協定調印を記念し、翌年開催された「メキシコ美術展」だ。本展は美術家たちに衝撃を与えたことで有名だろう。本章では同展で紹介された、メキシコ壁画運動の代表的な画家として知られるディエゴ・リベラ、ホセ・クレメンテ・オロスコ、ダビッド・アルファロ=シケイロスや、次世代のルフィーノ・タマヨの作品を中心に紹介している。

 メキシコ美術を語るうえで欠かせない壁画運動の源流は、1910年から起こったメキシコ革命にある。革命以前のヨーロッパ文化を偏重する潮流を否定して「メキシコ的なるもの」を求めた政府は、国の歴史やアイデンティティを民衆に共有するため、公共建築の壁面を画家に提供し壁画の制作を依頼した。これは、識字率の高くなかったメキシコにおいて、広く革命の思想を伝えるための重要な役割を果たし、同国の美術において大きな存在となっていく。

第1章「メキシコ美術がやってきた!」展示風景より

 この壁画運動における代表的な存在がディエゴ・リベラだ。ヨーロッパに学び、キュビスムやルネサンス期の壁画に造詣の深かったリベラは、帰国後に壁画運動に参加。大規模な壁画に取り組み西欧から注目されるようになる。

 リベラのほか、スペインのアステカ帝国征服を題材にした作品を多く残したホセ・クレメンテ・オロスコ、帝国最後の皇帝・カウテモックを題材にしたダビッド・アルファロ=シケイロス、ヨーロッパの美術を吸収しながら絵画を追求したルフィーノ・タマヨなど、本章では「メキシコ美術展」で数多くの点数が紹介された作家の作品が並ぶ。また、1936年に帰国するまでメキシコを拠点に活動し、日本へのメキシコ美術紹介の嚆矢となった北川民次も、本性においては重要な存在といえるだろう。

第1章「メキシコ美術がやってきた!」展示風景より

編集部

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