2階へ。寝室などプライベートのための部屋が並ぶが、シャンデリアや家具のみではなく、各部屋を異なる色合いやデザインの壁紙が彩っており、部屋を移動するごとに雰囲気の変化を体感できる。
2階の居住空間はおもに、皇帝建築や儀式で使用する建築の設計・監理を担当した宮内省内の組織、内匠寮(たくみりょう)の技師たちによってデザインされた(書斎と殿下居間はアンリ・ラパンが内装設計を担当)。内匠寮は100名を超す技師が所属し、工務課長・北村耕造のもとで全体の基本設計を建築係技師の権藤要吉が担当したほか、照明や家具を技手の水谷正雄らがデザインしたという記録が残っている。同時代の建築としては、東京国立博物館本館(計画案:渡辺仁)の実施設計などにも同部署が携わっていた。
建物2階南側には、殿下と妃殿下の居室からのみ出入り可能なベランダが設置されており、芝庭や日本庭園を一望することができる。大小の四角錐を組み合わせた灯具のフレームには屋外照明に用いられた型板ガラスが使用され、屋外との中間に位置することを感じさせる。また、白と黒の国産大理石が市松模様に敷かれた床のデザインにより、アール・ヌーヴォーやアール・デコよりもさらにモダンな印象を与える空間となっている。