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「space Un」がオープン。アフリカの現代アートと東京をつなげるプラットフォーム目指す

東京・南青山に新たなアートスペース「space Un(スペース・アン)」が誕生した。神戸、パリ、ベルリンを拠点に活動するコレクターのエドナ・デュマが創設したこの場所の狙いとは?

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

展示風景より

 明治神宮外苑から程近く。国道246号線から少し入った場所に新たなアートスペースが誕生した。それが「space Un(スペース・アン)」だ。

 同スペースは、神戸、パリ、ベルリンを拠点に活動するコレクターであるエドナ・デュマが創設したもの。共同創設者は俳優を中心に活動する中野裕太と、元アマゾン・ドイツのマネージング・ディレクターであり起業家のロータ・エックシュタイン。

space Un

 space Unは、アフリカの現代アート、日本とアフリカ、ディアスポラとの間の文化交流に焦点を当てるスペースを目指しており、デュマのアフリカの現代アートへの情熱とアフリカ人アーティストを支援したいという願いからスタートしたという。

 建築家・長谷川豪が設計。長谷川は、「アフリカの現代アートを紹介するだけでなく、カフェを併存させて来訪者とのコミュニケーションにも重きを置く、新しいタイプのアートギャラリーが求められた。既存の鉄骨梁をヒノキで覆ってその間に膜照明を仕込むことで天井面を『巨大な障子』に見立て、全体を柔らかい光で包み込むことで、アートとコミュニケーションの両方が主役になる空間を考えた。また日本とアフリカの木材の配置とバランスに意識して、互いの個性を引き立て合う状態を目指した」とのコメントを寄せている。

展示風景より

 space Unのこけら落としは、セネガル人アーティストのアリウ・ディアック(1987〜)の個展「Anastomosis(アナストモーシス)」。第15回ダカール・ビエンナーレ(2024年)のセネガル代表にもノミネートされたディアックは、奈良県・吉野町にある「吉野杉の家」での4週間にわたる滞在で制作した新作シリーズを発表。地元の人々とのコミュニケーションを通じて、アフリカの薬草など自然の素材をメディウムとして使い、作品をつくり上げたという。

 ディアックはこう語る。「私は普段から自然や地球からインスピレーションを受けている。吉野という林業が盛んな街で、人々が自然と会話しながら作業している様子を見ることができた。そこでは自然と人間がつながっている。今回の滞在によって、よりフィギュラティブな新しいシリーズを生み出せた。作品を吉野の檜のフレームに入れたのは地域の人々と交流できたから。木の可能性を感じた」。

 space Unにとって初のレジデンシーとなったディアックは、このプログラムについて「日本とセネガルをひとつにつなげるプラットフォームとして重要。日本に来てみると、人と自然の関係がセネガルと似ていると感じた。ここがアートを通じてほかの文化を理解するきっかけとなれば嬉しい」と振り返っている。

 同スペースでは今後、年4〜6回の展覧会を企画するだけでなく、アーティストを招聘するレジデンシープログラムも実施。視覚芸術だけに留まらず、音楽イベントから朗読会まで、分野横断的なプログラムを展開。さらに今後、その実績を踏まえて、奨学金制度、出版、エディションアートワークなどへと活動を広げていく予定だという。

左から、アリウ・ディアック、ロータ・エックシュタイン、エドナ・デュマ、中野裕太

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