「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を、建築家・山本理顕氏(1945〜)が受賞した。同賞における日本人受賞者は、丹下健三、槇文彦、安藤忠雄、妹島和世+西沢立衛、伊東豊雄、坂茂、磯崎新に続き9人目であり、プリツカー賞受賞最多の国となった。
山本氏は、中華人民共和国・北京に生まれ、第二次世界大戦後は横浜へと移住。1968年に日本大学理工学部建築学科卒業し、71年には東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修士課程修了。73年に山本理顕建築設計事務所を設立した。代表作には、「横須賀美術館」「公立はこだて未来大学」「横浜市立子安小学校」。海外では、チューリヒ空港の複合商業施設「THE CIRCLE」や韓国の集合住宅なども手がけている。
今回の受賞について山本氏は、「今朝、自身が手がけた横須賀美術館や横浜市立子安小学校に足を運んだところ『山本さんおめでとう』と書いてあって、小学生や先生、保護者の方々がとても喜んでくださった。1000人という大規模の小学校だったので、設計時には先生方とたくさん相談をして、できるだけ自由なスペースを設けたく広いテラスや庭を設計した。子供たちもうまく活用してくれている。受賞も嬉しかったが、小学校の皆さんに感謝されたことがとても嬉しかった。自分も少しはいい建築家なんだなぁ、と思うことができた」と時折涙を浮かべながら語った。
また、同賞を設立した米ハイアット財団会長トム・プリツカー氏や駐日米国大使ラーム・エマニュエル氏、2024年の同賞審査委員長を務め、自身も2016年にプリツカー賞を受賞しているチリの建築家アレハンドロ・アラベナ氏によると、山本氏の受賞は「建築を通じたコミュニティ創出」の観点がとくに評価されたという。
ほかにも、日本が最多受賞国となる件についての質問に山本氏は「坂茂氏や伊東豊雄氏のように、日本の建築家は他国よりもメッセージ性が強いということが最多受賞理由のひとつとして挙げられるだろう。それは建築家の働く環境の厳しさからくるものであり、困難な日本社会においてはタフな建築家でないと伝えることができないのが現状だ」と回答。今後の展望については、「自身の建築がクライアントより、周りに住んでる人たちに喜んでもらえるようなものとなるよう今後も努力していきたい」とその意気込みを語った。