洋菓子「シガール」で知られるヨックモックのプライベート美術館「ヨックモックミュージアム」。その第3弾となるコレクション展「ピカソのセラミック―モダンに触れる」が開幕した。初日の10月25日はパブロ・ピカソ(1881〜1973)の誕生日にあたる。会期は2023年9月24日まで。
ヨックモック・コレクションは、ピカソの幅広い芸術活動のなかでも、第二次世界大戦後に傾倒したとされる「セラミック作品」を中心に収集した世界有数のコレクション。本展では、監修者に河本真理(日本女子大学教授)を迎え、全体を「Ⅰ キュビスムと現実/虚構の狭間」「Ⅱ メタモルフォーズと遊戯」「Ⅲ ダンス/運動:セラミックは踊る」の3部に構成。ピカソのセラミック作品をクラシックと融合する「モダン」の視点でひも解き、紹介している。
「Ⅰ キュビスムと現実/虚構の狭間」では、20世紀初頭に若かりしピカソが創造し、その芸術の基盤ともなった「キュビスム」の視点からセラミック作品を取り上げる。本章では、キュビスム的にデザインされた静物から、魚が盛り付けられたようなコラージュ作品、色彩と形態が分離しカモフラージュされたような作品などが展示。ピカソが、晩年のセラミック作品においてもキュビスムを様々な視点から再解釈し、実験的に制作していた様子が伺える。
「Ⅱ メタモルフォーズと遊戯」「Ⅲ ダンス/運動:セラミックは踊る」の章でも、ピカソはセラミックをひとつの媒体として様々な手法を試し、セラミックおよび立体作品ならではの視覚的効果を見出したり、同時期の作家の影響から新たな表現が生み出されていることがわかる。これらを踏まえて、監修の河本は本展の見どころを「(ピカソの)遊び心とひねりの効いたエスプリ」であると語った。
また、企画展以外にもいくつか見どころがある。同館では、常設展として3面の壁に所狭しと並ぶピカソのセラミック作品を見ることができたり、ピカソの制作風景を再現したようなフォトスポットも用意されている。
ほかにも、ヨックモックミュージアムはそのコレクションから、会場のサインも陶器でデザインされているのが面白い。このような細かなこだわりも見どころのひとつと言えよう。
誰しもが知っているピカソとその絵画。しかし、セラミック作品という別の視点から垣間見えるピカソは、鑑賞者にとってどんな印象を与えるだろうか。遊び心にあふれたピカソの知られざる一面を、ぜひヨックモックミュージアムで体感してほしい。
なお、ヨックモックミュージアムにはカフェも併設。鑑賞後はヨックモックグループのハイエンド・ブランド「UN GRAIN(アン グラン)」のミニャルディーズをコーヒーとともに楽しみたい。