ヨックモックミュージアムの建物が公開。「友人を招くような美術館に」
今年10月に開館予定の「ヨックモックミュージアム」の建物が、いち早く公開された。ピカソのセラミック作品を展示する美術館ならではの工夫とは?
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今年10月25日、東京・南青山にある「ヨックモック青山本店」から徒歩圏内の場所に、新たな美術館「ヨックモックミュージアム」が開館する。同館は、ヨックモックグループが30年以上かけて収集してきた世界有数のピカソのセラミックコレクションを展示する美術館だ。その建築が、開館に先駆けて公開された。
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同館を設計したのは、隈研吾建築都市設計事務所に9年間在籍し、2013年に栗田祥弘建築都市研究所を設立した栗田祥弘。土地探しを含め、2015年から今回のプロジェクトに携わってきた。
かつて集合住宅があった土地に立つこの美術館は、地下1階から2階までの3層構造。ヨックモックのコーポレートカラーでもある青色の屋根瓦は、ピカソが生活していたコート・ダジュールの赤茶色の屋根瓦をイメージしてつくられたものだ。そこには、「美術館をピカソの生活の延長線上に」という意図が込められているという。
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2つの異なる展示室
ヨックモックミュージアムは地下と2階に展示室があり、1階部分にはカフェとピカソ・ライブラリーが併設されている。基本的に鑑賞順路は一方通行で、来館者はまず地下にある展示室へと降りることになる(なおカフェだけの利用も可能)。照明を落とした長い階段は、アートの世界に没入する気持ちをじょじょに高めていくためのものだ。
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地下の展示室の壁面は黒一色。そこには、「作品と1対1で向き合い、対話するように鑑賞してもらいたいという思いが込められている」と、同館主任学芸員・長瀬万里は話す。このフロアは企画展示室にあたる場所で、照明を調整することによって、セラミックだけでなく絵画や版画なども展示できるようになっている。
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開館時には、ピカソがセラミックに取り組み始める直前の、第二次世界大戦時の作品・資料とセラミックの初期作品が並ぶ。展示台も、現場で設計するという力の入れようだ。
この地下から2階へはエレベーターで移動する。2階は地下とは対象的に、自然光が入る明るい空間だ。
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通常、美術館では作品を自然光(紫外線)に晒すことを避ける。しかし、セラミックは紫外線に強く、また自然光のもとでより色が際立つため、2階はあえて光あふれる空間として設計された。
中庭に面して大きく開かれたこの展示室。もっとも高い部分で7.5メートルという天井も、開放的な雰囲気をもたらしている。
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なおこのフロアは常設展示室にあたる場所。一部の壁はピカソの皿55点で埋め尽くされる予定で、「空間とセラミックが呼応するような展示を楽しんでほしい」と栗田は語る。
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友人を招くような美術館に
2階展示室から外階段を降りると、そこにはカフェとミュージアムショップ、ライブラリーがある。
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同館では展覧会以外にも、子供から高齢者までが対象のアートセラピーを応用した「アートセッション」や、学芸員の解説やトークセッションなどの「レクチャーシリーズ」などを展開予定。1階は、その会場としても使用される。展覧会を見た来館者が、アートセッションにも自然に触れられるように、と設計された動線だ。
1階は中庭に面したガラス戸を全開することができ、外気を感じながらカフェやイベントを楽しむことができる。なお中庭には、ヨックモックのロゴのモチーフとしても使われているハナミズキの木が植えられている。
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あえて商業エリアを避け、ひっそりとした住宅街に開館するヨックモック・ミュージアム。そこには「来館者一人ひとりに丁寧に対応したい」「友人を招くようなアットホームな美術館にしたい」という想いがあるのだという。
青山界隈は岡本太郎記念館や根津美術館、山種美術館など、特色あるプライベートミュージアムが点在するエリア。このヨックモックミュージアムが加わることで、地域が「アート・ディストリクト」としてより活性化することも期待されている。10月の開館を楽しみに待ちたい。
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