住友コレクションを収蔵する公益財団法人泉屋博古館が約2年間の改修を経て、「泉屋博古館東京」を新たに開館させた。
泉屋博古館東京はもともと、2002年に京都の分館「泉屋博古館分館」として六本木一丁目の住友家旧麻布別邸跡地に開館したもの。開館から20年の節目となる今年、新たな美術館として生まれ変わった。
今回の改修では、エントランスホールや講堂、ショップ、そして2つの展示室などを新設。また既存の展示室はすべて改修され、空調設備と照明機器、ケースが最新のものとなり、鑑賞しやすい環境になっている(改修工事のポイントについてはこちら)。
この新たな美術館のリニューアルオープンを飾るのが、「日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京」だ。
住友コレクションは、世界的な青銅器コレクションをはじめ、中国絵画、日本の古画や工芸、西洋絵画に至るまで、幅広いジャンルの美術品を有する。その一角を占める近代日本画は、住友家第15代当主・住友吉左衞門友純(号・春翠)を中心に集められた。
なかでも日本画コレクションは、座敷飾りを意図した吉祥画や季節のうつろいを感じさせる花鳥画が多い。伝統を意識した格調高い作風がコレクションの基調であるとともに、大阪、京都、東京の三都で活躍した画家の作品からなることも見逃せない特徴だ。
本展は、その住友の日本画コレクションの全貌を展観するもの。住友と各地域の画家との交流について紹介するとともに、日本画壇を横断的に眺め、地域に根差した日本画の魅力とその多様性に光を当てる。
展示は「面の東京ー伝統と革新、官と在野」「東 meets 西ー日本画の三角関係」「線の京都ー写生という軸」「点の大阪ー大阪画壇の今昔」「住友春翠と日本画」で構成。
第一章では、江戸から東京へと時代が変わるなかで伝統と革新をめぐり「面的」に対立して発展した狩野芳崖、橋本雅邦、高島北海ら東京画壇にフォーカス。
第二章では、尾竹国鑑、木島櫻谷、上島鳳山の三都の作家を並べることでその制作志向や色彩表現などを比較する。白眉は上島鳳山による12幅からなる大作《十二ヶ月美人》(1909)だろう。各幅ごとの表情や仕草の多様さ、着物の柄や小道具に至るまでの繊細な描き込みは秀逸だ。三幅ごとに変えられている表具にも注目したい。
円山応挙から続く写生を重視しながら展開していった京都画壇。住友家の依頼によって描かれた木島櫻谷の《柳桜図》(1917)は金地に草花を描く琳派の系譜に連なるスタイルだが、厚く描かれた油絵のような花びらの表現がユニークだ。
東京や京都とは異なり、画壇というよりも個々人の活動が中心となっていた大阪の日本画。長らくその存在が見過ごされてきたものの、再び脚光を浴びつつある。住友家と深く交流した村田香谷の《西園雅集図》(1904)は群青や緑青をふんだんに使った代表作だ。
終章では、春翠と日本画の交流にフォーカス。春翠の収集の歴史が年表としてまとめられており、住友コレクション形成史を振り返ることができる。
新収蔵の作品を含む約50件(前後期で展示替えあり)を通して、改めて住友コレクションの真髄に迫りたい。