西船橋に新ギャラリー「Kanda & Oliveira」が誕生。こけら落としで会田誠、マッギンレー、森村泰昌など企業コレクションを展示

不動産を手がける株式会社西治が、創業の地である西船橋に現代美術ギャラリー「Kanda & Oliveira」をオープンさせた。オープニングは企業コレクションを紹介する「NISHIJI COLLECTION」。その様子をレポートする。

展示風景より、左から宮永愛子《life》(2018)、塩田千春《Skin》(2020)、ライアン・マッギンレー《Taylor (Black & Blue)》(2012)

 都内で不動産を手がける株式会社西治が、創業の地である千葉・西船橋に現代美術ギャラリー「Kanda & Oliveira」をオープンさせた。こけら落としとして、2013年より収集を続けてきた西治の企業コレクションを紹介する「NISHIJI COLLECTION」が2月23日より開催される。

「Kanda & Oliveira」の外観

 「Kanda & Oliveira」は、ディレクターを西治の代表取締役である神田雄亮が、マネージャーをフランス人のOliveiraが務める。今後は現代美術を中心に工芸や古美術といった分野も含めたプログラムを企画し、作品を展示、販売していく予定だ。

 ギャラリーが位置するのは西船橋駅より徒歩10分、千葉街道沿いとなる。特注の黒いぶし瓦とのこぎり屋根が組み合わされた独特の建築は、ヘルツォーク&ド・ムーロン在籍時に香港の「M+」を手がけた小室舞が率いる建築集団「KOMPAS」が手がけている。本記事では 「NISHIJI COLLECTION」の展示のハイライトとともに、屋内の様子も紹介していきたい。

「Kanda & Oliveira」の外観

 「Kanda & Oliveira」は、美術ギャラリーには珍しく、展示室に外光をふんだんに取り入れる構造となっている。エントランスを入ってすぐ、1階の展示室は吹き付け工法による壁と道路に面した細長い窓が特徴だ。この部屋で注目したいのは、会田誠《滝の絵》(2007-10)の下絵(2006)だろう。会田のキャリアを語るうえでは欠かせない作品の、貴重な下絵を見られる機会となる。また、窓辺には青木美歌のガラス作品《Bergaberg》(2015)が展示されており、時間とともに変化する日差しによって、作品が様々な表情を見せる様子を楽しめる。

展示風景より、左からヴィヴィアン・ホー《刹那的光輝不是永恆 Forever is a lie always》(2018)、堀越達人《Ghost》(2010)、青木美歌《Bergaberg》(2015)
展示風景より、左が会田誠《滝の絵》(2007-10)の下絵(2006)
展示風景より、青木美歌《Bergaberg》(2015)

 加えてこの展示室では、ヴィヴィアン・ホーやアブデルカダー・ベンチャマといった、日本ではまだ広く紹介されていない海外作家の作品も展示されており、企業コレクションを通して新たな作家を知る良い機会になるだろう。

展示風景より、左から中園孔二《Untitled》(制作年不明)、アブデルカダー・ベンチャマ《Engramme - Fata Bromosa》(2021)
展示風景より、左から堀越達人《Imagination(She`s hearing mountain voice)》(2015)、田中武《咲き乱れる情報》(2021)

 2階の踊り場には、森洋史の大型作品を展示。瓦のあいだからふんだんに入り込んだ外光が、ミラーがあしらわれた作品を輝かせる。

展示風景より、森洋史《Invincible Girl》(2017)

 また、2階には森村泰昌《烈火の季節(もうひとつのアサヌマ)》(2006)が展示されている。1960年に社会党の浅沼稲次郎が演説中に右翼の山口二矢に刺殺された事件の写真を森村が演じた作品で、見るものに強烈なインパクトを与える。

展示風景より、森村泰昌《烈火の季節(もうひとつのアサヌマ)》(2006)

 2階の展示室はそのままバルコニーへと続く開放的な空間となっており、このバルコニーは訪れた人々が集うだけでなく、映像作品の上映なども可能となっている。

展示風景より、左から工藤麻紀子《かれ山》(2017)、志賀理江子《Bethany》(2005)
2階バルコニーからのぞむ3階

 ギャラリー最大の展示空間となる3階展示室では作品5点を展示。この空間で強い存在感を示すのが、幅5メートル弱の威容を誇る久松知子の《日本の美術を埋葬する》(2014)だ。2015年に絹谷幸二賞の奨励賞を受賞した本作は、日本の美術史を象徴する31名の作家や批評家たちと久松自身の姿が、ギュスターヴ・クールベ《オルナンの埋葬》(1849-50)を想起させる構図で描かれている。

展示風景より、左から久松知子《日本の美術を埋葬する》(2014)、加藤泉《Untitled》(2018)

 ディレクターの神田によれば、この《日本の美術を埋葬する》は「Kanda & Oliveira」の所信表明のような作品であるという。神田が持っている現在の日本の美術界に対する疑問や、新ギャラリーを通して美術界に問いかけを行うことの自負を、本作に投影しているそうだ。

展示風景より、久松知子《日本の美術を埋葬する》(2014)

 ライアン・マッギンレーの《Taylor (Black & Blue)》(2012)は、国内初個展となった「ライアン・マッギンレー BODY LOUD1!」(2016年、東京オペラシティ アートギャラリー)で展示されていた作品で、目にしたことのある人も多いだろう。

展示風景より、ライアン・マッギンレー《Taylor (Black & Blue)》(2012)

 また、壁面から吊るされた加藤泉の大型の立体作品《Untitled》(2018)や梅津庸一《死霊がわたしを見ている Ⅱ》(2017)など、各作家の作風を瑞々しく伝える大型作品がこの展示室には集まっている。のこぎり型の明り取りの窓がつけられた天井から室内に自然光が降り注ぎ、作品にそれぞれ異なる表情を与えている。

展示風景より、左から加藤泉《Untitled》(2018)、梅津庸一《死霊がわたしを見ている Ⅱ》(2017)
展示風景より、宮永愛子《life》(2018)

  なお、同展示室のとなりの小型展示室では、塩田千春のキャンバス作品と立体作品も展示されている。

展示風景より、左から塩田千春《Skin》(2020)、《State of Being(Dress)》(2019)

 今回のオープニング展覧会は所蔵作品展となったが、今後は作家を取り扱い、個展なども行っていくという。所属作家のひとりである堀越達人の新作個展「小さい頃は神様がいて」が、次回展覧会として4月15日より開催される予定だ。

展示風景より、左から会田誠《滝の絵》(2007-10)の下絵(2006)、ヴィヴィアン・ホー《刹那的光輝不是永恆 Forever is a lie always》(2018)、堀越達人《Ghost》(2010)

 企業コレクションを紹介すると同時に、アーティストの活動支援に対する強いプレゼンテーションともなっている本展。「Kanda & Oliveira」のこれからの展開に期待したい。

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