メトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門に属する約2500点の西洋絵画コレクションから、選りすぐられた珠玉の名画65点を紹介する展覧会「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」が東京の国立新美術館で開幕した。
本展は、今年1月16日まで大阪市立美術館で開催された同名の展覧会の巡回展示。会場は「信仰とルネサンス」「絶対主義と啓蒙主義の時代」「革命と人々のための芸術」の3章で構成されており、ラファエロ、カラヴァッジョ、レンブラント、フェルメール、ルーベンス、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌなど、15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派までの名画が一堂に展示されている。
東京展の担当研究員である宮島綾子(国立新美術館主任研究員)は「美術手帖」の取材に対し、「2000平米の展示室のなかにまったく柱のない空間を仕切りながら展示していけるというのは、当館の一番の特徴」としつつ、次のように話した。
「コロナの影響でなかなか海外の美術館を見られないので、海外の美術館に行っているような気持ちになっていただきたいなと思い、なるべく大きなギャラリーがあって、行き来できるような小さな部屋が脇にあるというような空間づくりで構成を考えた」。
例えば第1章「信仰とルネサンス」では、イタリアと北方のルネサンスを代表する画家たちによる17点の作品を展覧。宮島は、「大阪展では、イタリアと北方のルネサンスを混ぜて展示していたが、東京展では空間が広いので、イタリアと北方を行き来しながら見ていただけるといいなと思い、そのふたつの部屋を完全に分けた。また、一方通行ではなく、ふたつの入り口があるので、(作品を)比較しながら自由で自発的に見ていただける」と話す。
宮島によれば、テーマ展の関係で作品の並び方を大阪展から大きく変えることはしていないが、クロノロジカルにたどるという大きなテーマのなかで、類似性や影響関係がある2点の作品を同じ壁に組み合わせることで、作品を引き立つようにすることを意識しているという。
例えば、第2章「絶対主義と啓蒙主義の時代」の注目作品であるカラヴァッジョの《音楽家たち》(1597)とジョルジュ・ド・ラ・トゥールの《女占い師》(おそらく1630年代)は、大阪展で異なる場所で展示されていた。本展では、その2点が同じ壁に並んで紹介されており、題材や構図を比較しながら見ると面白いだろう。
宮島は、「同じ展覧会を見ても、空間が違うと作品の見え方も違う。ふたつを見比べていただくと2回楽しめると思う」と語る。メトロポリタン美術館の優れた所蔵品を通し、西洋絵画の発展を概覧する本展。すでに大阪展をご覧になった方でも、東京展を訪れれば新たな発見ができるのではないだろうか。