動物という存在を追い求めて南アフリカを旅したり、野生動物に関する本を大量に収集したり、フランシス・ベーコンは動物の行動に生涯魅了され続けた。ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催されている「人と獣」展は、ベーコンが動物に対して抱いた深い関心を紐解き、またその関心が彼の究極の主題である人間の本質にどう関係していったのかを初公開を含む45点からたどるものだ。
幼少期に第一次世界大戦が起こり、キャリア初期には第二次世界大戦を経験したベーコン。人間がおそろしいまでに過激な暴力をふるう様子を目にし、まさに1944年から46年のあいだに制作した作品から本展は始まる。歪んだ人間を描いた《Figure Study》や、人でも野獣でもない幽霊のようなかたちをした《FURY》などだ。
そこから40年代後半から50年代にかけて、ベーコンは人間と人間でない動物の境界線を探求していく。1949年の初めて個展に向けて、6点からなる連作絵画「頭部」を制作し、そのうちの《Head I》《Head IV》《Head VI》が今回展示された。なんの生き物なのかもわからないポートレートは、私たちに動物界におけるヒトの優越性について問いかける。