金沢の国立工芸館では現在、「アール・ヌーヴォー」を様々な視点から紹介する「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」が開催されている。会期は3月21日まで。
アール・ヌーヴォーとは、フランス語で「新しい芸術」を意味する言葉。19世紀末〜20世紀初頭にかけて広くヨーロッパで流行したこの様式の誕生には、遠く離れた日本の美術(ジャポニスム)が大きな影響を与えた。いっぽう、ジャポニスムの母胎となった日本では、多くの美術家たちがアール・ヌーヴォーを最先端の美術として受け入れた。
本展は、この日本と西洋のアール・ヌーヴォーの還流=「めぐる」をキーワードに、そこから生まれた豊かな表現を紹介するものだ。展示は「日本のインパクトと〈新しい芸術〉(アール・ヌーヴォー)の誕生」「アール・ヌーヴォーの先へ、図案家たちが目指したもの」「季節がめぐる工芸、自然が律動するデザイン」の3部構成。
「日本のインパクトと〈新しい芸術〉(アール・ヌーヴォー)の誕生」では、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド、アルフォンス・ミュシャ、エミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリックなどアール・ヌーヴォーを代表する作家たちとともに、その流行に反応した同時代の初代宮川香山や二代横山彌左衛門、大島如雲らの作品も展示されている。
続く「アール・ヌーヴォーの先へ、図案家たちが目指したもの」では、1900年前後に雑誌などの印刷メディアを通して、あるいはパリでの様子を見聞きすることでアール・ヌーヴォーと出会った日本の画家や図案家にフォーカス。日本におけるアール・ヌーヴォー受容で重要な杉浦非水をはじめ、浅井忠、神坂雪佳らに注目することで、アール・ヌーヴォーから何を採り入れ、どのように発展させたのかを探るものとなっている。
日本の装飾芸術は、アール・ヌーヴォーの時代に限らず、つねに自然に寄り添ってきた。展示を締めくくる「季節がめぐる工芸、自然が律動するデザイン」は、こうした日本の装飾芸術の特質に注目し、時代を超えた工芸家たちの様々な表現を展覧するものとなっている。
ジャポニスムからアール・ヌーヴォーに至るヨーロッパの装飾芸術の流れと、アール・ヌーヴォーを受容した日本美術を、代表的な作家の作品で概観する本展。約150点の作品を通して、美の循環を見つめたい。