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ミュシャ、ガレから杉浦非水、神坂雪佳まで。国立工芸館「めぐるアール・ヌーヴォー展」に見る美の循環

東京国立近代美術館のコレクションに京都国立近代美術館が所蔵する関連作品も加えて、「アール・ヌーヴォー」を様々な視点から紹介する展覧会「めぐるアール・ヌーヴォー展」が、金沢の国立工芸館で開催されている。

展示風景より

 金沢の国立工芸館では現在、「アール・ヌーヴォー」を様々な視点から紹介する「めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン」が開催されている。会期は3月21日まで。

 アール・ヌーヴォーとは、フランス語で「新しい芸術」を意味する言葉。19世紀末〜20世紀初頭にかけて広くヨーロッパで流行したこの様式の誕生には、遠く離れた日本の美術(ジャポニスム)が大きな影響を与えた。いっぽう、ジャポニスムの母胎となった日本では、多くの美術家たちがアール・ヌーヴォーを最先端の美術として受け入れた。

 本展は、この日本と西洋のアール・ヌーヴォーの還流=「めぐる」をキーワードに、そこから生まれた豊かな表現を紹介するものだ。展示は「日本のインパクトと〈新しい芸術〉(アール・ヌーヴォー)の誕生」「アール・ヌーヴォーの先へ、図案家たちが目指したもの」「季節がめぐる工芸、自然が律動するデザイン」の3部構成。

 「日本のインパクトと〈新しい芸術〉(アール・ヌーヴォー)の誕生」では、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルド、アルフォンス・ミュシャ、エミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリックなどアール・ヌーヴォーを代表する作家たちとともに、その流行に反応した同時代の初代宮川香山や二代横山彌左衛門、大島如雲らの作品も展示されている。

第1章展示風景より、金森宗七《花鳥文様象耳付大花瓶》(1892)
第1章展示風景より、左からエミール・ガレ《獅子頭『日本の怪獣の頭』》(1876-84)、《トンボ文杯》(1880年代)
第1章展示風景より、ドーム兄弟の作品群
第1章展示風景より、初代宮川香山《色入菖蒲図花瓶》(1897-1912)
第1章展示風景より、アルフォンス・ミュシャ《サラ・ベルナール》(1896)

 続く「アール・ヌーヴォーの先へ、図案家たちが目指したもの」では、1900年前後に雑誌などの印刷メディアを通して、あるいはパリでの様子を見聞きすることでアール・ヌーヴォーと出会った日本の画家や図案家にフォーカス。日本におけるアール・ヌーヴォー受容で重要な杉浦非水をはじめ、浅井忠、神坂雪佳らに注目することで、アール・ヌーヴォーから何を採り入れ、どのように発展させたのかを探るものとなっている。

第2章展示風景より、四代清水六兵衛《萱艸模様螺鈿応用花瓶》(1913)
第2章展示風景より、神坂祐吉《月象之図 硯付手箱》(制作年不詳)
第2章展示風景より、左から中沢弘光《かきつばた》(1918)、杉浦非水《三越呉服店》(1915)
第2章展示風景より、中央は北原千鹿《山葡萄置物》(1927)

 日本の装飾芸術は、アール・ヌーヴォーの時代に限らず、つねに自然に寄り添ってきた。展示を締めくくる「季節がめぐる工芸、自然が律動するデザイン」は、こうした日本の装飾芸術の特質に注目し、時代を超えた工芸家たちの様々な表現を展覧するものとなっている。

第3章展示風景より
第3章展示風景より、手前は田口義明《秋蒔絵棗》(2002)、高野松山《蒔絵鈴虫香合》(1969)
第3章展示風景より、手前は鹿島一谷《布目象嵌秋之譜銀水指》(1978)

 ジャポニスムからアール・ヌーヴォーに至るヨーロッパの装飾芸術の流れと、アール・ヌーヴォーを受容した日本美術を、代表的な作家の作品で概観する本展。約150点の作品を通して、美の循環を見つめたい。

編集部

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