京都で現代アートの熱気を感じる。「Art Collaboration Kyoto」で見るべきポイントは?
様々な「コラボレーション」から生まれる新しいアートフェア「Art Collaboration Kyoto」(ACK)が、京都の国立京都国際会館イベントホールで開幕した。その見どころをレポートで紹介する。
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様々な「コラボレーション」をテーマに企画・運営を行うことが特徴的な新アートフェア「Art Collaboration Kyoto」(ACK)が、京都の国立京都国際会館イベントホールで開幕した。会期は11月7日まで。
メイン会場は、日本国内のギャラリー22軒が「ホスト」となり、日本国外に本拠地のあるギャラリーを「ゲスト」として迎え、ブースを共有して出展する「Gallery Collaborations」、京都ゆかりのアーティストを個展、または3名程度のグループ展の形式で紹介する「Kyoto Meetings」、そして京都に様々な形式で関わりのあるアーティストの作品を紹介する特別展「Beyond Kyoto」によって構成されている。
建築家・周防貴之が担当した展示会場には、様々なサイズの展示ブースが一見ランダムに分散したかたちで配置。一軒家が数多く建っている街と見立て、来場者は散策するようにブースをめぐることができる。各ブースの照明や壁面も多くのフェアで見られるような簡易的なものではなく、ギャラリー空間を思わせるしっかりしたデザインが施されているのが特徴だ。
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本レポートでは「Gallery Collaborations」を中心に、このフェアの見どころを紹介したい。
東京・銀座にあるギャラリー・THE CLUBと、シカゴに本拠地を置くKavi Gupta Galleryは「神秘性」や「不可解なもの」といったテーマをもとに、アメリカ人アーティストのインカ・エッセンハイとコア・ポアの2人展を開催。作品の価格帯は85万円〜1500万円で、フェアの開幕前にすでに3点の作品が購入されたという。
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THE CLUBのマネージングディレクター・山下有佳子は、「展示作品の世界はとてもきれいな世界だが、その理解できないという点は私たちがいま生きている世界に共通している」とし、今回のコラボレーションの意義についてこう話している。
「コラボレーションをすることで、鑑賞者は2倍楽しめる。まだ海外になかなか行けないいま、インターナショナルなコンテンツが見られる機会をつくること、そしてアート・ワールドがガラパゴス化しているいま、交わりを維持することがとても大事だと思う。また、歴史のある町としての京都でインターナショナルな現代アートを見せるのも、今回のブレイクスルーだ」。
東京のNANZUKAは佃弘樹、山路紘子、安部貢太朗の作品を出品。そのゲストギャラリーであるニューヨークのPetzelは、ピーター・スクールワース、ニコラ・タイソン、サラ・モリスの作品を紹介している。日本で見る機会が少ないニューヨーク・アートシーンの最前線を代表するこれらの作品の価格は最大2000万円。フェア開幕の1時間後に同ブースの半分以上の作品が売約済みまたはキープだったという。
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東京のANOMALYとロサンゼルスに本拠地のあるBlum & Poeの共同ブースでは、Chim↑Pom、潘逸舟、石川順惠、中村一美、朱金石といった作家5名の作品を紹介。時代や背景の異なる作家たちでありながらも、作品に共通しているのが社会情勢に異議申し立てを行うという姿勢だ。作品の価格は1000ドル〜4万ドル。
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Blum & Poe東京のディレクター・今井麻里絵は、「この組み合わせはおそらくいままでなかったと思う。コラボだからこそできる組み合わせでやるというのは最初のアイデアで、そこでいろんなコンテキストや議論が生まれてくるといいなと考えている」と話している。
コンセプチュアルな作品を多く扱っている東京のTARO NASUとベルリンのEsther Schipperは、両ギャラリーがともに取り扱っているライアン・ガンダー、サイモン・フジワラ、ピエール・ユイグに加え、ミカ・タジマ、フィリップ・パレーノ、ウゴ・ロンディノーネの作品を展示。作品の価格は200万円〜3000万円。
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TARO NASUの細井真子は、「いずれの作品もそのモノ自体が大事ではなくて、それが表している変化やその象徴しているものがテーマなので、そういう意味では共通するものを持っていると思う」と述べている。
東京の小山登美夫ギャラリーは、日本国内のアートフェアに初めて出展する、ニューヨークに本拠地のあるFergus McCaffreyとコラボレーションし、菅木志雄、リチャード・ノナス、マーシャ・ハフィフの3人展を開催している。菅の作品の価格は165万円〜800万円で、ノナスとハフィフの作品の価格は5000ドル〜12万5000ドル。
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ミニマルでコンセプチュアル的な作品が印象的なこのブース。小山登美夫ギャラリーの石川絵理は、「もの派は日本で発生したムーブメントだが、その時代には世界同時多発的に身近にあるモノで作品をつくるという潮流もあった。それを2021年に改めて見せるという企画だ」としている。
そのほか、東京のTakuro Someya Contemporary ArtとアムステルダムのUPSTREAM GALLERYは、デジタルアーティストのハーム・ファン・デン・ドーペルがAIを用いて制作した作品などを紹介。京都のGALLERY TOMOとイタリア・コモのMarsiglione Arts Galleryは、篠原猛史が「音」という要素に着目した立体作品や、マックス・パペスキによる挑発的かつ風刺的な写真作品を展示している。京都のMORI YU GALLERYとニューヨークのRICHARD TAITTINGER GALLERYとの共同ブースで展示されている、河合政之がライフパフォーマンスを行うことで作品がつねに変化するインスタレーションなども印象的だ。
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いっぽうのKyoto Meetingsでは、KEN NAKAHASHI(東京)が性愛や生きる痛みなどをテーマに制作を続ける松下真理子による新作のペインティング、ギャラリーノマル(大阪)が京都を拠点に国内外で活躍する名和晃平の絵画、COHJU contemporary art(京都)が主に京都を拠点に活動している東慎也、高橋知裕、大和美緒の3名の作品を展示している。
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Beyond Kyotoでは、宮島達男、ヒスロム、金氏徹平×森千裕、オルタナティブキョウト もうひとつの京都2021、SIDE CORE、田中功起による作品を展示ブースの外壁やフリースペースなどで特別展示。また、宝ヶ池畔に佇む茶室「宝松庵」では、金氏徹平、SIDE CORE、染谷聡によるグループ展も同プログラムの一部として行われている。
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なお京都府内の各所では、多種多様なオブジェクトを集めたアーティスト主導のフェアイベント「OBJECT -Object & Book 2021-」や、歴史ある建築空間と現代美術および工芸を融合させた展覧会「洛宙KANSEIアート展 京都2021 −創光の森−」など多彩なサテライトプログラムも同時開催。秋色に染まり始めた京都で、旬のアートフェアを堪能してほしい。