アーティストで京都芸術大学教授の椿昇がディレクションし、2018年より回数を重ねてきたアートフェア「ARTISTS' FAIR KYOTO」。その第4回目が、京都文化博物館別館と京都新聞ビル地下1階をメイン会場にスタートした(一般会期は3月6日〜7日)。
同フェアは、名和晃平、塩田千春、加藤泉といった第一線で活躍しているアーティスト17名がアドバイザリーボードとなり、それぞれ若手作家を推薦。これに公募で選ばれた作家を加え、全42組の若手アーティストが作品を出品している。
昨年は新型コロナの感染拡大を受け、開幕直前で急遽中止となった。文化芸術活動が大きな打撃を受けるなか、椿は「アートは本来的に意味も役割もない。ゆえにAIなどに取って代わられることもなく、もっとも人間的なものと言える。その重要性に多くの人が気づき始めたのではないでしょうか」と話す。
会場となるのは、京都府京都文化博物館 別館と京都新聞ビル地下1階の印刷工場跡の2ヶ所。この2会場はそれぞれで出品作品が異なっており、京都府京都文化博物館 別館はペインティングなど平面作品が中心の構成だ。会場デザインはこれまで同様、ドットアーキテクツが手がけており、回遊しやすい設計となっている。作品も、これまで以上にレベルが高いものが並んでいる印象だ。
いっぽうの京都新聞ビル地下1階は、2019年からこのフェアの会場となった場所。印刷工場跡という特殊な環境にインスタレーションや映像作品など、ブース型のアートフェアではなかなか見られないような、比較的規模が大きな作品が並ぶ。こうした2会場でまったく違う雰囲気を楽しめるのが、ARTISTS' FAIR KYOTOの醍醐味だ。
今回のフェアでは、これまでにないアワードが新設されたことも大きなポイントとして注目したい。フェアのメイン協賛企業である株式会社アカツキが支援する「ARTISTS' FAIR KYOTO 2021 Akatsuki ART AWARD」では、飯田志保子(キュレーター)、中井康之(国立国際美術館研究員)、山峰潤也(一般財団法人東京アートアクセラレーション共同代表、ANB Tokyoディレクター)、そして椿昇の4名が審査委員となり、4名の優秀賞と1名の最優秀賞を選出。優秀賞には、たかくらかずき、NAZE、檜皮一彦、藤本純輝が、最優秀賞には野田幸江が選ばれた。最優秀賞には賞金100万円と、六本木にあるANB Tokyoでの個展開催権が与えられ、フェア会場と東京をつなぐブリッジとなる。
いま、アートはある種の「バブル」とも言われる。投資を含めたアートがブームになり、若手作家ですら二次市場を含めて作品価格が急激に上昇するという現象も見られるが、椿は「それだと市場が荒れてしまう」と危惧する。「一度価格を上げてしまえば下げることができなくなる。いま必要なのは、ちゃんと価値づけされるシステムです」。
ARTISTS' FAIR KYOTOでは、椿をはじめとするベテラン作家たちが参加作家と密にコミュニケーションをとり、マーケットの仕組みや知識を伝えている。また作家も来場者に直接作品をプレゼンテーションすることで、「売ること」への意識が必然的に高まる。京都は現代美術のギャラリーが圧倒的に少ないこともあり、このフェアが全国のアートコレクターたちと若手作家との交流プラットフォームにもなっていることも事実だ。
椿が京都にアートのエコシステムを形成すべく、着実にプラットフォームとして成長させてきたARTISTS' FAIR KYOTO。いまを生きる作家たちとコミュニケーションをとりながら、マーケットを揺らす熱気を感じたい。
なお、今回も京都の街中でサテライト展示を実施。千丸屋京湯葉本店、藤井大丸 ブラックストレージ、藤井大丸、Artist-in-Residence 賀茂なす、ygion、新風館、Bijuu、庵町家ステイ「三坊西洞院町家」の各会場で、それぞれの会場にあわせた個展・グループ展が開催されている。各会場で会期が異なるので、詳細は公式サイトにて確認してほしい。