中国に渡って天台の教えを学び、「天台宗」を日本に広めた伝教大師最澄(768〜822)。その1200年大遠忌を記念した特別展「最澄と天台宗のすべて」が、東京国立博物館平成館を会場に開幕した。会期は11月21日まで。
本展は、天台宗の総本山であり、多くの高僧を輩出した比叡山延暦寺の宝物をはじめ、全国各地の天台宗諸寺院等が守り伝えてきた秘仏や文化財の数々を一挙に紹介するもの。
展覧会は「最澄と天台宗のはじまり─祖師ゆかりの名宝」「教えのつらなり─最澄の弟子たち」「全国への広まり─各地に伝わる天台の至宝」「信仰の高まり─天台美術の精華」「教学の深まり─天台思想がウンだ多様な文化」「現代へのつながり─江戸時代の天台宗」の6章構成で、比叡山延暦寺における天台宗の開祖から、東叡山寛永寺創建によって天台宗が江戸幕府とつながりを得るまでの時代の流れを、豊富な名宝とともに提示する。
例えば仏像では、日本最大の肖像彫刻として知られる「慈恵大師 (良源)坐像」(東京・深大寺蔵)が、展覧会史上初出展。高さ2メートルという同坐像は、通常50年に一度開扉される秘仏だが、本展での出品により205年ぶりの出開帳となった。
その他にも「阿弥陀如来立像」(京都・真正極楽寺(真如堂)蔵)、「薬師如来坐像」 (岐阜・願興寺(蟹薬師)蔵)や「薬師如来立像」(京都・法界寺蔵)といった寺外初公開の仏像にも注目だ。
また絵画においては、現存最古の最澄の肖像画を含む、インド・中国・日本の天台ゆかりの人物たちを描いた平安絵画、国宝「聖徳太子及び天台高僧像」も公開。11月2日~11月7日の6日間限定で全十幅が同時に鑑賞できる(前後の期間は展示替えを行いながら複製を含む十幅を展示)。
書物としては、現存する唯一の最澄自筆の手紙とされる国宝「尺牘(せきとく)」(久隔帖(きゅうかくじょう))(10月12日~10月31日限定)や、天台宗開祖の経過がうかがえる最澄筆の国宝「天台法華宗年分縁起」などを展示。
会場には比叡山延暦寺の総本堂「根本中堂」の一部が再現されており、展覧会全体を通して、最澄と天台宗の世界に迫る。なお本展は九州会場(2022年2月8日~3月21日、九州国立博物館)、京都会場(2022年4月12日~5月22日、京都国立博物館)へと巡回予定。各会場で地域ごとの特色が生かされた展示になるという。