初期から現在まで草間彌生のモノクローム世界をたどる。「神秘と象徴の中間」展が草間彌生美術館で開幕
草間彌生のモノクローム作品に注目した展覧会「神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム」が、草間彌生美術館で開幕した。本展では、1950年代から制作が続くモノクロームの絵画シリーズ「無限の綱」から近年の「わが永遠の魂」シリーズにおけるモノクローム絵画までの作品を紹介し、草間が一貫して追求してきた独自のモノクロームの世界をたどる(緊急事態宣言の延長により4月29日~6月2日は臨時休館)。
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※本展は政府による緊急事態宣言の延長を受け、6月2日まで休館期間を延長することとなる(2021年5月11日追記)
草間彌生のモノクローム世界に焦点を当てた展覧会「神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム」が、草間彌生美術館でスタートした(緊急事態宣言の発令により4月29日~5月12日は臨時休館)。
近年、カラフルでポップな作風で広く知られている草間だが、1950年代からは「無限の綱」に代表されるモノクローム絵画を制作し始め、以降、白や金・銀1色で塗りつぶしたソフト・スカルプチュアや、単色でありながらあらゆる色を反射する鏡の部屋などのインスタレーション、そして最新の絵画シリーズ「わが永遠の魂」において単色あるいは地色と描画色の2色に限定した絵画作品など、様々なモノクローム作品を制作してきた。
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本展では、そんな草間のモノクローム作品を約67点紹介。世界初もしくは日本初公開の作品を含め、初期から現在に至るまで草間が一貫して追求してきた独自のモノクロームの世界を概覧する。
1階エントランスでは、鑑賞者が覗き込む小型のミラールーム作品《去ってゆく冬》(2005)を展示。作品の表面に複数の穴が開いている同作は、内面も外面も鏡面となっており、鑑賞者は穴から内側を覗くと、自分の顔や外部の風景が鏡面に無限に反射する。外側の鏡面には、エントランス空間の白い壁などが反射されており、作品がまるで展示空間と一体化しているような感覚が生じる。
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2階には、50年代末に制作された《無限の綱(1)》(1958)をはじめ、70年代〜90年代につくられたソフト・スカルプチュア作品や、80〜90年代に刷られたエッチングによる版画作品とセラミックの小立体作品、2000年代のシルクスクリーンによる版画シリーズ「愛はとこしえ」が並ぶ。
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無数の白色の弧を連続して描くことで画面を成立させる《無限の綱(1)》では、厚塗りの絵の具の凹凸によって陰影のリズムが生まれ、画面が振動しているように見える。また、無数の突起物の集積に金・銀の単色が塗られたソフト・スカルプチュアシリーズでも、同じような視覚効果がもたらされる。
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3階のギャラリーは、近年の絵画シリーズ「わが永遠の魂」のモノクローム作品と、2019年に制作されたインスタレーション作品《雲》(2019)が組み合わさった展示となった。
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「わが永遠の魂」シリーズの最初期には、連続を感じさせる女性の横顔や目、日用品などのモチーフが多く描かれているいっぽうで、同シリーズの最新作では反復される円弧や水玉、ストライプなどのパターンが繰り返し用いられており、初期の「無限の綱」に通じる画面の振動が感じられる。また、ステンレス製の《雲》は、「わが永遠の魂」シリーズの作品を反射し、様々な色が増殖するような体験をもたらしている。
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4階では、同館前回の展示で初めて公開された参加型作品《フラワー・オブセッション》(2017 / 2020)を引き続き展示。鑑賞者が花柄のステッカーもしくは造花をリビング・ルームを模した部屋の好きな場所に貼り付け、部屋を花で埋めつくす同作。展示室内はすでに黄色一色の花で覆われており、草間がかつて自伝のなかで語った、テーブル・クロスの花模様が部屋中に増殖する幻覚の世界が実際に立ち現れている。
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図と地が流動的で、オールオーヴァーに作品表面を覆い、さらには作品の外へも拡がる印象を与える草間のモノクロームの作品。その強烈な視覚性やドライブ感をぜひ会場で体感してほしい。