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2020.12.9

「宇宙を描く画家」長岡秀星の回顧展が開幕。原画でその画業に迫る

宇宙や未来をモチーフにした作風で、国際的に活躍したグラフィックデザイナー・長岡秀星。長岡のアルバムジャケットやポスタービジュアルを始めとした原画を展示する回顧展「SPACE FANTASY ー透明な宇宙を求めてー」が、東京・代官山ヒルサイドフォーラムで開幕した。会期は12月27日まで。

「SPACE FANTASY ー透明な宇宙を求めてー」展示風景
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 宇宙やSFをモチーフにした作風で国際的に活躍したグラフィックデザイナー・長岡秀星(1936〜2015)。その回顧展「SPACE FANTASY ー透明な宇宙を求めてー」が東京・代官山ヒルサイドフォーラムで開幕した。会期は12月27日まで。

 長岡秀星は1936年、長崎県生まれ。70年の大阪万国博覧会で展示用イラストレーションを担当し、同年4月に渡米。約3ヶ月後にカリフォルニアの雑誌『WEST』のカバーにスペースシャトルを描き、この作品で「宇宙を描く画家」として全米から注目を集めるようになる。本展は、アルバムジャケットからコマーシャル用のビジュアルに至るまで原画70点を展示し、その画業に迫る展覧会だ。

「SPACE FANTASY ー透明な宇宙を求めてー」展示風景

 長岡の名を多くの人に知らしめることになったのが、音楽のアルバムジャケットだ。とくにファンクバンド、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの1977年のアルバム『All ’N All』(太陽神)は著名なもののひとつ。同展では、アメリカレコード協会より最優秀アルバムカバーとしてしてプラチナディスクを受賞したこのアルバムカバーの、巨大な原画が展示される。古代から未来へ至る「時の流れ」と「人間の情熱」をテーマに描かれたという同作。同展では、長岡とアース・ウィンド・アンド・ファイアーのモーリス・ホワイトがアルバムカバーのコンセプトづくりのために交わしたメモスケッチも見ることができる。

展示風景より、長岡秀星《All ’N All》(1974)
展示風景より、アース・ウィンド・アンド・ファイアー『All ’N All』(1977)のジャケット
展示風景より、長岡秀星とモーリス・ホワイトによるメモスケッチ

 そのほか、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのアルバム『I AM(黙示録)』のインサイドカバーとなった《I AM》(1979)や、スカイライナーズ、ミッドナイトスター、スペース、メイズといったミュージシャンのアルバムジャケットの原画も展示。

展示風景より、左から長岡秀星《I AM》(1977)、《SKYLINERS》(1978)
展示風景より、左から長岡秀星《宇宙のディスコハウスレディー》(1978)、《ピアニストの幻想》(1978)

 宇宙や未来のイメージを提示する長岡は、1985年に開催された国際科学技術博覧会(つくばみらい博)のビジュアルとして「TSUKUBA EXPO `85」シリーズも制作している。これらは万博会場において、プロジェクターによる投影という、当時目新しかった手法によって紹介された。長岡は1分ほどで切り替わりながら表示されるこれらの作品について、絵柄をきめ細かくせずに色彩で変化を見せるように工夫したという。

 長岡は万博のビジュアル制作に関して、次のような言葉を残している。「人間は本当にケシ粒みたいな存在なんだけれども、その中でくり返しくり返し、生命を得ては宇宙と一体化しているという、東洋人の観念のようなものを表現したつもりです」。

展示風景より、長岡秀星「TSUKUBA EXPO `85」シリーズ
展示風景より、左から長岡秀星《つくば科学万博`85のポスター》(1985)、《JUST BLUE》(1979)

 ほかにも、小説のカバー、テレビ番組やコマーシャル用のビジュアルなど、長岡の多岐にわたる活動を伝える原画を展示。さらに実際のレコードのジャケットも数多くそろう。

「SPACE FANTASY ー透明な宇宙を求めてー」展示風景
「SPACE FANTASY ー透明な宇宙を求めてー」展示風景

 デジタルツールがない時代に、アクリル絵具によって宇宙や未来の都市を微細かつ、質感豊かに描き出した長岡。その技術と表現を原画で見られる貴重な展覧会だ。